2006年12月21日未明、北海道函館市にてタクシーのトランクの中から運転手(当時42歳)の遺体が発見された。売上金が奪われており、タクシー強盗に遭って殺害されたとみられる。2021年1月現在も犯人は特定されておらず未解決。
【事件発生】
事件の被害者はタクシー会社「しんわ交通」に務める八木橋朋弘さん。21日の午前3時頃に"流し"営業のため七重浜営業所を出発し、客を乗せたとの無線連絡が入ったものの、その後は交代時間の午前6時半になっても戻ってこなかった。
同僚数人がGPS情報をもとに捜索すると、函館市港町3の小田島川河口付近の岸壁で八木橋さんのタクシーを発見。タクシー車体には血痕がついており、同僚たちは配車係を通じて警察へ通報。駆けつけた函館西署署員が確認したところ、トランクから八木橋さんの遺体が発見された。
八木橋さんはワイシャツにズボン姿で、トランク内でうつぶせにされていた。顔や腹など数カ所に刃物によるものとみられる刺し傷があり、特に心臓まで達する深い傷が致命傷となった模様。売上金約2万円の入ったバッグは奪われており、警察は強盗殺人事件とみて捜査を開始する。
【当日のルート】
GPSの解析により当日の八木橋さんの運行状況が明らかになっている。地図入りの詳細なルートは道警ホームページにあるので後掲のリンクから参照頂きたい。
解析によれば、21日の午前3時50分頃、八木橋さんは北杜市七重浜1付近にて、前日から数えて16番目の客を乗せ、国道227号に沿って亀田郡七飯町へ向かった。そして午前4時5分頃に七飯町字仁山付近でタクシーは空車になる。その後、周辺を約15分ほど走行した。
午前4時20分頃、七飯町字峠下102番地付近で停車。ここで八木橋さんの大量の血痕が見つかっており、携帯電話やマイカーの鍵が落ちていたことからも、殺害現場である可能性が高い。
その後、タクシーは同地から国道227号、228号を経てタクシー発見現場の函館市港町3丁目に至る。峠下から港町までは犯人自らがタクシーを運転していったとみて間違いないだろう。なお、港町までは直行せず、一旦反対方向へ向かったようで、犯人がタクシーの放置場所を探していたものとみられている。
【推理】
犯人が奪った金額は約2万円ぽっちだったため、強盗目的ではなく怨恨に基づく犯行とする見方もある。しかし八木橋さんの携帯電話には呼び出されたような形跡は無く、"流し"の営業ルートや時間帯を予測するのも難しいだろうから、顔見知りの人物による計画的な犯行の線というのは考え難い。一方で、見つかっていない凶器は犯人が予め持っていたはずであるから、金目当てによる"流し"の犯行、すなわちタクシー相手であれば乗員は誰でもよかったとみるべきだろう。
午前4時5分に一旦空車になっている点も気になる。犯人は3時50分頃に七重浜で乗った16番目の客なのか、それとも殺害現場となった峠下で乗ろうとした17番目の客がいるのか。犯人は運転日報も持ち去ったらしく、この点は今なお不明のままだ。もし16番目の客が犯人なのだとしたら、当初は強盗目的ではなかったものの、車中で何かしら感情的な諍いになったか、あるいは料金支払い時にトラブルになって殺害に至ったとも考えられるところだ。
タクシーの放置された現場はフェリー乗り場のすぐ側で、犯人は事件後すぐに本州に脱出したかもしれない。
【未解決のタクシー強盗殺人事件】
神奈川県平塚市タクシー強盗殺人事件(2010年5月)
運転手が"最後の乗客"に襲撃された後トランクに閉じ込められ、そのまま火を付けられて一酸化炭素中毒により死亡。
運転手をトランクに閉じ込めてから人目に付きにくい場所まで犯人自らタクシーを運転した模様。
新潟市タクシー運転手被害強盗殺人事件(2009年11月)
運転手が"最後の乗客"により刺殺される。防犯カメラ映像や乗務記録から「男・一人」の犯行とみられている。
道警ホームページによると、北海道内では本事件の他にも札幌市で発生したタクシー強盗殺人事件2件が未解決のようだ。
いずれの事件も深夜から未明にかけて発生している。車内用の防犯カメラ設置も進んでいるとはいえ、タクシー車内はある種の密室だ。こうした事件の犯人が野放しになっている限り、世の運転手たちの不安が無くなることはないだろう。一刻も早い犯人逮捕が望まれる。
【リンク】
北海道警による情報提供呼びかけページは以下。情報量は多い。未解決事件の情報提供を呼びかけるなら、やはりこれくらいやってもらわなくては。
https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/incident/02_murder%20case/2006.12.21/2006.12.21.html
【出典】
朝日新聞2006年12月21日「タクシーから運転手?の遺体 函館」
読売新聞2006年12月21日「タクシー運転手?殺される トランクに遺体、頭殴られた跡 函館の岸壁」
読売新聞2006年12月22日「タクシー運転手殺害 七飯に血痕、函館に運ぶ? 売上金も不明」
朝日新聞2006年12月23日「運転日報持ち去る 犯人、足取り隠す工作か 函館・タクシー運転手強殺」
朝日新聞2006年12月25日「最後の客、午前3時24分以降 函館・タクシー強盗殺人」
読売新聞2006年12月28日「函館・タクシー運転手殺害 客16組中14組を確認 手がかり少なく…」
読売新聞2006年12月31日「函館タクシー運転手強殺 殺害場所は七飯町峠下 血痕が被害者と一致」
朝日新聞2007年1月19日「犯行推定時刻は「午前4時15分」タクシー運転手強殺」
読売新聞2007年1月19日「函館・運転手強殺 タクシー停車の数分間で犯行か」
朝日新聞2019年12月21日「函館のタクシー強盗殺人、未解決のまま13年に」
北海道ニュースHUB2020年12月21日「タクシー運転手強盗殺人事件から14年「わかってきたこともある」警察"情報提供を"」
【事件発生】
事件の被害者はタクシー会社「しんわ交通」に務める八木橋朋弘さん。21日の午前3時頃に"流し"営業のため七重浜営業所を出発し、客を乗せたとの無線連絡が入ったものの、その後は交代時間の午前6時半になっても戻ってこなかった。
同僚数人がGPS情報をもとに捜索すると、函館市港町3の小田島川河口付近の岸壁で八木橋さんのタクシーを発見。タクシー車体には血痕がついており、同僚たちは配車係を通じて警察へ通報。駆けつけた函館西署署員が確認したところ、トランクから八木橋さんの遺体が発見された。
八木橋さんはワイシャツにズボン姿で、トランク内でうつぶせにされていた。顔や腹など数カ所に刃物によるものとみられる刺し傷があり、特に心臓まで達する深い傷が致命傷となった模様。売上金約2万円の入ったバッグは奪われており、警察は強盗殺人事件とみて捜査を開始する。
【当日のルート】
GPSの解析により当日の八木橋さんの運行状況が明らかになっている。地図入りの詳細なルートは道警ホームページにあるので後掲のリンクから参照頂きたい。
解析によれば、21日の午前3時50分頃、八木橋さんは北杜市七重浜1付近にて、前日から数えて16番目の客を乗せ、国道227号に沿って亀田郡七飯町へ向かった。そして午前4時5分頃に七飯町字仁山付近でタクシーは空車になる。その後、周辺を約15分ほど走行した。
午前4時20分頃、七飯町字峠下102番地付近で停車。ここで八木橋さんの大量の血痕が見つかっており、携帯電話やマイカーの鍵が落ちていたことからも、殺害現場である可能性が高い。
その後、タクシーは同地から国道227号、228号を経てタクシー発見現場の函館市港町3丁目に至る。峠下から港町までは犯人自らがタクシーを運転していったとみて間違いないだろう。なお、港町までは直行せず、一旦反対方向へ向かったようで、犯人がタクシーの放置場所を探していたものとみられている。
【推理】
犯人が奪った金額は約2万円ぽっちだったため、強盗目的ではなく怨恨に基づく犯行とする見方もある。しかし八木橋さんの携帯電話には呼び出されたような形跡は無く、"流し"の営業ルートや時間帯を予測するのも難しいだろうから、顔見知りの人物による計画的な犯行の線というのは考え難い。一方で、見つかっていない凶器は犯人が予め持っていたはずであるから、金目当てによる"流し"の犯行、すなわちタクシー相手であれば乗員は誰でもよかったとみるべきだろう。
午前4時5分に一旦空車になっている点も気になる。犯人は3時50分頃に七重浜で乗った16番目の客なのか、それとも殺害現場となった峠下で乗ろうとした17番目の客がいるのか。犯人は運転日報も持ち去ったらしく、この点は今なお不明のままだ。もし16番目の客が犯人なのだとしたら、当初は強盗目的ではなかったものの、車中で何かしら感情的な諍いになったか、あるいは料金支払い時にトラブルになって殺害に至ったとも考えられるところだ。
タクシーの放置された現場はフェリー乗り場のすぐ側で、犯人は事件後すぐに本州に脱出したかもしれない。
【未解決のタクシー強盗殺人事件】
神奈川県平塚市タクシー強盗殺人事件(2010年5月)
運転手が"最後の乗客"に襲撃された後トランクに閉じ込められ、そのまま火を付けられて一酸化炭素中毒により死亡。
運転手をトランクに閉じ込めてから人目に付きにくい場所まで犯人自らタクシーを運転した模様。
新潟市タクシー運転手被害強盗殺人事件(2009年11月)
運転手が"最後の乗客"により刺殺される。防犯カメラ映像や乗務記録から「男・一人」の犯行とみられている。
道警ホームページによると、北海道内では本事件の他にも札幌市で発生したタクシー強盗殺人事件2件が未解決のようだ。
いずれの事件も深夜から未明にかけて発生している。車内用の防犯カメラ設置も進んでいるとはいえ、タクシー車内はある種の密室だ。こうした事件の犯人が野放しになっている限り、世の運転手たちの不安が無くなることはないだろう。一刻も早い犯人逮捕が望まれる。
【リンク】
北海道警による情報提供呼びかけページは以下。情報量は多い。未解決事件の情報提供を呼びかけるなら、やはりこれくらいやってもらわなくては。
https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/incident/02_murder%20case/2006.12.21/2006.12.21.html
【出典】
朝日新聞2006年12月21日「タクシーから運転手?の遺体 函館」
読売新聞2006年12月21日「タクシー運転手?殺される トランクに遺体、頭殴られた跡 函館の岸壁」
読売新聞2006年12月22日「タクシー運転手殺害 七飯に血痕、函館に運ぶ? 売上金も不明」
朝日新聞2006年12月23日「運転日報持ち去る 犯人、足取り隠す工作か 函館・タクシー運転手強殺」
朝日新聞2006年12月25日「最後の客、午前3時24分以降 函館・タクシー強盗殺人」
読売新聞2006年12月28日「函館・タクシー運転手殺害 客16組中14組を確認 手がかり少なく…」
読売新聞2006年12月31日「函館タクシー運転手強殺 殺害場所は七飯町峠下 血痕が被害者と一致」
朝日新聞2007年1月19日「犯行推定時刻は「午前4時15分」タクシー運転手強殺」
読売新聞2007年1月19日「函館・運転手強殺 タクシー停車の数分間で犯行か」
朝日新聞2019年12月21日「函館のタクシー強盗殺人、未解決のまま13年に」
北海道ニュースHUB2020年12月21日「タクシー運転手強盗殺人事件から14年「わかってきたこともある」警察"情報提供を"」