2004年2月9日午前10時頃、佐賀県鳥栖市飯田町の市道に止められた軽乗用車内から、車の持ち主の会社員男性(24歳)が遺体で発見された。男性は何者かに殺害されたとみられているが、2021年1月現在も犯人は特定されていない。未解決事件。
【冷たい手】
事件の被害者は入口和俊さん。福岡県三井郡大刀洗町で両親と妹と共に4人暮らしだった。
和俊さんは2月8日(日曜日)の昼頃から知人女性に会うために外出する。その日は帰宅せず、家族はどこかに泊まってそのまま会社へ行くのだろうと考えたが、9日の朝に和俊さんの勤務先から「欠勤している」と連絡が入る。和俊さんは真面目な勤務態度が社内からも取引先からも評価されていて、それまで遅刻も無断欠勤もしたことがなかったという。
不審に思った母親は、8日に和俊さんと会った知人女性に電話をすると、小郡市で共に食事をするなどした後で22時過ぎに別れたとのこと。和俊さんは「すこし眠ってから帰る」と言っていたともいう。
和俊さんは以前にも安全のため車内で仮眠を取ってから家に帰ることがあった。そこで家族が心当たりのある場所を捜すと、佐賀県鳥栖市飯田町の市道にて和俊さん所有の白のワゴンRが停められているのを見つけた。
「うっかり寝過ごしてしまったのだ」と思った家族は車のドアを開けて和俊さんの手を握る。しかしその手は冷たかった。和俊さんは死んでいた。もう二度と目を覚ますことはなかった。
【冷たい手】
事件の被害者は入口和俊さん。福岡県三井郡大刀洗町で両親と妹と共に4人暮らしだった。
和俊さんは2月8日(日曜日)の昼頃から知人女性に会うために外出する。その日は帰宅せず、家族はどこかに泊まってそのまま会社へ行くのだろうと考えたが、9日の朝に和俊さんの勤務先から「欠勤している」と連絡が入る。和俊さんは真面目な勤務態度が社内からも取引先からも評価されていて、それまで遅刻も無断欠勤もしたことがなかったという。
不審に思った母親は、8日に和俊さんと会った知人女性に電話をすると、小郡市で共に食事をするなどした後で22時過ぎに別れたとのこと。和俊さんは「すこし眠ってから帰る」と言っていたともいう。
和俊さんは以前にも安全のため車内で仮眠を取ってから家に帰ることがあった。そこで家族が心当たりのある場所を捜すと、佐賀県鳥栖市飯田町の市道にて和俊さん所有の白のワゴンRが停められているのを見つけた。
「うっかり寝過ごしてしまったのだ」と思った家族は車のドアを開けて和俊さんの手を握る。しかしその手は冷たかった。和俊さんは死んでいた。もう二度と目を覚ますことはなかった。
【捜査と推理】
司法解剖の結果、和俊さんの死因は脳挫傷と判明した。頭から血を流しており、顔面にも多数の傷があった。凶器は見つかっていないが、鈍器のようなもので殴られた様子。死亡推定時刻は8日の午後23時から9日の午前3時頃とみられている。
上述のとおり、和俊さんは事件以前にも路肩に車を停めて助手席で仮眠を取ることがあったというから、仮眠中に突然襲撃されたのだろう。現場に車を停めたのが偶然であったとしたら、見知った人物による計画的犯行というよりは行きずりの人間による犯行とみるのが自然だ。
和俊さんの財布が奪われており、ひょっとしたら強盗目的だったのかもしれない。報道によれば、現場付近では薬物中毒者がたむろし、過去に摘発したことがあったという。なお、和俊さんの遺体からはアルコール、薬物、毒物は検出されていない。
一つ目の謎は殺害場所だ。狭い軽乗用車内で鈍器で殴りつけるのは決して容易ではない。また、運転席や助手席にも血痕が付着していたが、その量はそれほど多くなく、別の場所で殺害されてから助手席に戻された可能性がある。
二つ目の謎は遺体の乗った車の左前後輪が側溝に脱輪していたことである。側溝には約5メートルに渡って断続的に傷が残っており、脱輪しながら走行して付いたか、若しくは脱輪後に車を車道に戻そうとして付いたか。そうなると交通トラブルに遭った線も考えられるが、現場市道はそれなりの広さがあり、普通に運転する限り脱輪はまず有り得ない。他の車両と接触したような痕跡もない。車の鍵はイグニッションキーに刺さったままだった。
二つの謎を併せて推理すれば、犯人は仮眠中の和俊さんを強盗目的で車中から引きずり出し、何処か別の場所で殺害した後、隠蔽のため遺体を助手席に乗せて車を動かそうとしたところで誤って脱輪した、といったところだろうか。遺体の頭部には黒いビニール袋が被せられていたとのことで、少なくとも犯人に事件発覚を遅らせたい意図があったのは間違いないだろう。
【真相を求めて】
遺体の第一発見者となったのは母親と妹である。母親は遺体の手を握ったときの冷たい感触が忘れられないと悲痛な想いを語っている。
父親にとっては42歳のときにやっと儲けた最愛の息子だった。事件後は仕事が手につかなくなり退職。以後、現在に至るまで事件の真相を追い続けている。2021年1月現在は切れているようだが、一時期は200万円の私費懸賞金もかけていた。また、犯罪被害者遺族の会「宙の会」の会員としても活動している。
佐賀県警は毎年2月頃にビラ配りを行うなど2021年現在も捜査を継続している。しかし、遺体発見現場こそ佐賀県内で佐賀県警の管轄となるものの、和俊さんは福岡県生まれ福岡県育ちで勤務先も久留米市で、しかも事件直前も福岡県内で遊んでいたのだから、真相を解明するには福岡県警と密接に連携した捜査が必要だ(った)と指摘する声もある。
【リンク】
佐賀県警による情報提供呼びかけページは以下。
https://www.police.pref.saga.jp/johoteikyo/_3720.html
司法解剖の結果、和俊さんの死因は脳挫傷と判明した。頭から血を流しており、顔面にも多数の傷があった。凶器は見つかっていないが、鈍器のようなもので殴られた様子。死亡推定時刻は8日の午後23時から9日の午前3時頃とみられている。
上述のとおり、和俊さんは事件以前にも路肩に車を停めて助手席で仮眠を取ることがあったというから、仮眠中に突然襲撃されたのだろう。現場に車を停めたのが偶然であったとしたら、見知った人物による計画的犯行というよりは行きずりの人間による犯行とみるのが自然だ。
和俊さんの財布が奪われており、ひょっとしたら強盗目的だったのかもしれない。報道によれば、現場付近では薬物中毒者がたむろし、過去に摘発したことがあったという。なお、和俊さんの遺体からはアルコール、薬物、毒物は検出されていない。
一つ目の謎は殺害場所だ。狭い軽乗用車内で鈍器で殴りつけるのは決して容易ではない。また、運転席や助手席にも血痕が付着していたが、その量はそれほど多くなく、別の場所で殺害されてから助手席に戻された可能性がある。
二つ目の謎は遺体の乗った車の左前後輪が側溝に脱輪していたことである。側溝には約5メートルに渡って断続的に傷が残っており、脱輪しながら走行して付いたか、若しくは脱輪後に車を車道に戻そうとして付いたか。そうなると交通トラブルに遭った線も考えられるが、現場市道はそれなりの広さがあり、普通に運転する限り脱輪はまず有り得ない。他の車両と接触したような痕跡もない。車の鍵はイグニッションキーに刺さったままだった。
二つの謎を併せて推理すれば、犯人は仮眠中の和俊さんを強盗目的で車中から引きずり出し、何処か別の場所で殺害した後、隠蔽のため遺体を助手席に乗せて車を動かそうとしたところで誤って脱輪した、といったところだろうか。遺体の頭部には黒いビニール袋が被せられていたとのことで、少なくとも犯人に事件発覚を遅らせたい意図があったのは間違いないだろう。
【真相を求めて】
遺体の第一発見者となったのは母親と妹である。母親は遺体の手を握ったときの冷たい感触が忘れられないと悲痛な想いを語っている。
父親にとっては42歳のときにやっと儲けた最愛の息子だった。事件後は仕事が手につかなくなり退職。以後、現在に至るまで事件の真相を追い続けている。2021年1月現在は切れているようだが、一時期は200万円の私費懸賞金もかけていた。また、犯罪被害者遺族の会「宙の会」の会員としても活動している。
佐賀県警は毎年2月頃にビラ配りを行うなど2021年現在も捜査を継続している。しかし、遺体発見現場こそ佐賀県内で佐賀県警の管轄となるものの、和俊さんは福岡県生まれ福岡県育ちで勤務先も久留米市で、しかも事件直前も福岡県内で遊んでいたのだから、真相を解明するには福岡県警と密接に連携した捜査が必要だ(った)と指摘する声もある。
【リンク】
佐賀県警による情報提供呼びかけページは以下。
https://www.police.pref.saga.jp/johoteikyo/_3720.html
【出典】
朝日新聞2004年2月10日「脱輪車内に他殺体 福岡の男性、殴打跡 佐賀・鳥栖」
朝日新聞2004年2月10日「仮眠中に殺害か 佐賀・鳥栖の脱輪車遺体事件」
毎日新聞2004年2月10日「車内に、24歳の他殺体−−佐賀・鳥栖の市道」
毎日新聞2004年2月10日「佐賀・鳥栖の変死 別の場所で殺害、遺棄の可能性も」
読売新聞2004年2月10日「軽乗用車内に男性他殺体 大刀洗の24歳、頭・顔に傷/佐賀・鳥栖」
毎日新聞2004年2月11日「乗用車から財布なくなる−−佐賀・鳥栖の他殺体」
朝日新聞2004年2月12日「財布・携帯盗む?遺体運ぶ途中脱輪か 鳥栖の殺人事件」
毎日新聞2004年2月12日「交通トラブルで会社員を殺害か 幅寄せで脱輪?」
読売新聞2004年2月12日「鳥栖・男性殺害事件 財布見つからず」
読売新聞2004年3月18日「鳥栖・他殺体発見から1か月 被害者の足取りつかめず 県警「行きずり」=佐賀」
読売新聞2006年2月8日「鳥栖路上殺人から2年...見えぬ糸口「情報を」遺族悲痛=佐賀」
毎日新聞2008年10月26日「忘れない:「未解決を歩く」佐賀・鳥栖の会社員殺害 高速脇の死角、情報なく」
毎日新聞2009年1月28日「佐賀・鳥栖の会社員殺害:逃げ得は許さない 私費で検証継続、遺族が検討」
読売新聞2009年2月8日「鳥栖の会社員殺害、あす5年 「犯人許さない」父・俊さん、私費で懸賞金=佐賀」