2012年4月24日午後13時55分頃、宮城県仙台市泉区「仙台徳洲会病院」の駐車場にて、軽乗用車から火が出ているのを病院職員が発見した。火はすぐに消し止められたものの、後部座席足元部分から男性の遺体が見つかった。男性は煙を吸った形跡が無く、出火前に殺害されていたことが判明。警察は殺人・死体遺棄事件として捜査を開始するが、2021年1月現在も犯人は特定できておらず未解決事件となっている。

【何時、何処で、誰と?】
 亡くなったのは仙台市太白区に住む武田 忠さん(当時60歳)で、火の付けられた車は武田さん自身が所有するダイハツ・ミラであった。

 武田さんは4月23日昼過ぎに内縁の妻をパチンコ店に送って以降連絡が取れなくなり、女性は24日午後に「事故に遭っていないか」と警察に届け出ていた。

 司法解剖の結果、武田さんの胃には23日昼に女性と共にとった昼食とみられる内容物があり、女性と別れてから数時間以内に殺害されたとみられる。パチンコ店を出た武田さんは、付近の防犯カメラに車を運転する姿が映っており、どうやら自宅方面へ向かったようだが、何処へ行って誰と会ったのか正確なところは未だ分かっていない。

【分析】
 死因は首のあたりを殴られるか踏まれるかした頸部損傷。顔には殴られたような痣が多数あり、一部は皮下出血しており、鼻骨は折れ、両目にも出血斑があった。鈍器の類は使用されず、素手で殴られたものとみられる。

 武田さんの遺体は車両後部座席の足元スペースに押し込められていたが、死後硬直が始まってしまうとこのようにして押し込むのは難しくなる。つまり、犯人は武田さんを殺害後間もなくその遺体を当該スペースに押し込んだようである。

【なぜ病院駐車場を選んだか】
 何処かで武田さんを殺害した後、犯人は遺体を車に乗せて仙台徳洲会病院の駐車場に向かったわけだが、そのルートは特定されておらず、なぜ病院駐車場を選んだのかもハッキリしていない。仙台徳洲会病院は出入りする車や人通りが多く、しかも車は駐車場中央寄りに止められていた。遺体を隠したかったのならば他に場所はありそうなものだ。因みに、武田さんは同病院に通院はしていないとのこと。

 とはいえ、犯人は遺体が容易に見つからないように考えていたらしく、車助手席と後部座席の窓は新聞紙で目隠しがされていた。後部座席の新聞紙はテープで貼り付けられ、助手席のそれは窓上の取っ手部に挟み込むようにして固定した模様。なお、新聞は23日朝のスポーツ新聞で、武田さん自身が購入したものとみられる。

 駐車場への入庫時間帯は、当初は遺体発見直前、すなわち24日午後13時半過ぎとされていたが、その後の目撃証言から、同日午前9時半頃には止められていたと見做されている。従って、犯人は駐車場に車を止めて遺体を一旦放置したが、約5時間後に再び現場に戻ってきて車に火を付けたというわけだ。

 ただし、同病院駐車場は有料で、駐車券が発券されるのだが、その駐車券は犯人によって持ち去られており、正確な入庫時間帯は特定されていない。駐車券を持ち去ったのは指紋を残さないようにするためとも考えられる。

 車両後部に油を撒かれた痕跡があり、遺体の横たわっていた足元スペースや遺体そのものからは痕跡が見つかっていない。車内の酸素が足りなくなったことで火はほぼ自然消火的に収まったという。

【犯人像】
 報道によれば、車内には武田さんの財布がそのまま残されていたとのことで、強盗目的というよりは怨恨による殺害とみるのが自然だろう。しかし、武田さんはあまり交友関係が広くないようだが、その狭い人間関係からトラブルの兆候は確認されていない。知り合いによれば、武田さんはたいへん真面目な性格で、パチンコもやらず、日頃飲み歩いたりする習慣もなく、トラブルに巻き込まれるような人ではないという。顔見知りではない行きずりの人間による犯行という可能性も十分あり得るところだ。

【リンク】
 宮城県警による情報提供呼びかけページは以下。
 https://www.police.pref.miyagi.jp/hp/so1/mikaiketu/mikaiketu.html

【出典】
 読売新聞2012年4月25日「燃えた車の中から男性遺体見つかる 仙台の病院駐車場」 
 読売新聞2012年4月26日「仙台遺体 殺人で捜査 身元は判明」 
 読売新聞2012年4月26日「車内に遺体 男性 首強く殴られ死亡 煙充満、吸った形跡なし=宮城」
 朝日新聞2012年4月27日「被害者、23日から戻らず 車で外出 仙台・泉区の殺人事件/宮城県」
 読売新聞2012年4月28日「被害者顔に多数の打撲痕 車内から遺体 恨みによる犯行か=宮城」 
 朝日新聞2012年4月28日「死後短時間で車内に 仙台・泉の殺人/宮城県」
 読売新聞2012年4月29日「車の後部座席 放火の形跡 仙台の男性殺害 証拠隠滅工作か=宮城」 
 読売新聞2012年4月30日「車内から駐車券見つからず 仙台の男性殺害=宮城」
 朝日新聞2012年4月30日「車内に被害者財布 恨みによる犯行か 仙台・泉の殺人/宮城県」
 朝日新聞2012年5月2日「首を踏みつけ殺害か 仙台・泉の殺人事件/宮城県」
 読売新聞2012年5月8日「4月23日午後に殺害か 駐車場遺体遺棄、丸一日近く経過後=宮城」
 読売新聞2012年5月10日「仙台の男性殺害 駐車場入り、放火10分以内か 車内に燃えた新聞紙=宮城」
 朝日新聞2012年5月10日「車の窓の大半が新聞紙で覆われる 仙台・泉の殺人/宮城県」
 朝日新聞2012年5月11日「24日午前に車目撃情報 仙台・泉の殺人/宮城県」
 読売新聞2012年5月25日「看板・チラシで「情報を」 仙台の男性殺害1か月=宮城」
 読売新聞2012年12月21日「車、5時間以上前に放置 死体遺棄 病院駐車場内、戻り放火か=宮城」