2010年5月20日未明、神奈川県平塚市横内にて、タクシー運転手の男性が殺害され、売上金を奪われるという強盗殺人事件が発生した。運転手は、刃物で切りつけられた後、タクシーのトランクに閉じ込められ、運転席あたりに火をつけられて一酸化炭素中毒死させられるという極めて凶悪な犯行であった。
未明かつ人通りの少ない場所での犯行ということもあり、目撃証言に乏しく、2021年現在も犯人を特定することはできておらず、未解決事件となっている。
【トランクに閉じ込められ、車に火をつけられて】
2010年5月20日午前2時30分頃、相模中央交通平塚営業所に勤務するスタッフが、神奈川県平塚市を走る同社タクシーの無線から「ガガガ」というノイズがするのを聞いた。不審に思ったスタッフは同タクシー運転手のケータイに電話するも通じず、GPS情報を基に同僚運転手が確認に向かうと、同タクシーは平塚市横内の東海道新幹線高架下で煙をあげて止まっていた。運転手は会社を通じて110番通報する。
同日午前3時45分頃、通報を受けた平塚署署員が現場に駆けつけると、タクシーのトランクから運転手の荒井 庄次郎さん(当時62歳)の遺体が発見された。売上金数万円や財布に入れていた所持金がなくなっていたことから、警察は強盗殺人事件として捜査を開始する。
遺体は首の左側あたりにカッターナイフなどの薄い刃物による傷が複数あった。両手や腕の傷は抵抗した時にできる防御創であり、首の左側の傷はやや深いものであったが、これは致命傷にはならなかったようで、死因は一酸化炭素中毒だった。すなわち、荒井さんは、刃物で切りつけられた上でトランクに閉じ込められ、その後に運転席あたりに火をつけられ、充満した煙によって死に至ったということである。車内の血痕は比較的少なかったと報道されている。
【死へのドライブ】
荒井さんは、5月19日の朝から勤務しており、最後の客を20日午前2時20分頃にJR平塚駅北口で乗せたとみられる。そこから料金メーター2240円分の距離を走行した。
GPSの解析によれば、タクシーの発見された新幹線高架下に着くまでに信号の無い箇所で何度か停止していたらしく、荒井さんのケータイも高架下から数百メートル離れた地点に落ちていた。これはつまり、メーター2240円分の地点で何かしらのトラブルが発生し、荒井さんはそこで切りつけられた上でトランクに閉じ込められ、その後は犯人自らタクシーを運転して人目につきにくい場所として高架下に停め、そして運転席あたりに火をつけたことを意味する。司法解剖の結果、荒井さんの死亡推定時刻は20日午前3時頃とのこと。なお、遺体発見時に車のキーは付けられていたが、エンジンはかかっていなかったという。
【タクシーの防犯事情】
荒井さんの運転するタクシーには、車外向けのドライブレコーダーカメラはあったが、車内の防犯カメラはなかった。タクシー会社も防犯効果を理解してはいるものの、安いモデルでも1台約3万円というコストがネックとなっており、事件当時の新聞報道によれば、神奈川県内では4~5%程度の導入率だった。だが、荒井さんの所属していた相模中央交通は、従業員の身の安全を第一に考え、事件後直ちに全車に防犯カメラの設置を決定している。
タクシー強盗事件の大半は、深夜から未明の時間帯に発生している。本事件の約半年前に発生し、同じく長期未解決事件となっている新潟市タクシー運転手被害強盗殺人事件もそうだ。2006年12月に発生した函館市タクシー運転手強盗殺人事件も未明の犯行だった。しかもタクシーの運転手は背後から襲われる格好となるため、抵抗するのも容易ではない。そのため、仕切り板を設けるなど、物理的障壁を設けるのも重要となる。乗客だけでなく、運転手の安全も保障する環境整備が今後も進められることを期待したい。
因みに、料金支払い時にトラブルが発生することが多いためか、運転手はとっさに逃げられるように料金支払い時にシートベルトを外すといった防犯対策もあるようです。
【リンク】
神奈川県警による情報提供呼びかけページは以下のとおり。
https://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesc1049.htm
【出典】
神奈川新聞2010年5月20日「タクシーのトランクに運転手の遺体、殺人か/神奈川・平塚」
神奈川新聞2010年5月21日「タクシー運転手殺される、売上金なく首から血/平塚」
神奈川新聞2010年5月22日「タクシー運転手強盗殺人事件、死因は一酸化炭素中毒、閉じ込められ車に火か/平塚」
日本経済新聞2010年5月22日「神奈川のタクシー運転手強盗殺人、死因はCO中毒」
神奈川新聞2010年5月22日「カメラ導入や仕切り板の大型化など夜間タクシーの防犯に課題/平塚・運転手強盗殺人事件」
未明かつ人通りの少ない場所での犯行ということもあり、目撃証言に乏しく、2021年現在も犯人を特定することはできておらず、未解決事件となっている。
【トランクに閉じ込められ、車に火をつけられて】
2010年5月20日午前2時30分頃、相模中央交通平塚営業所に勤務するスタッフが、神奈川県平塚市を走る同社タクシーの無線から「ガガガ」というノイズがするのを聞いた。不審に思ったスタッフは同タクシー運転手のケータイに電話するも通じず、GPS情報を基に同僚運転手が確認に向かうと、同タクシーは平塚市横内の東海道新幹線高架下で煙をあげて止まっていた。運転手は会社を通じて110番通報する。
同日午前3時45分頃、通報を受けた平塚署署員が現場に駆けつけると、タクシーのトランクから運転手の荒井 庄次郎さん(当時62歳)の遺体が発見された。売上金数万円や財布に入れていた所持金がなくなっていたことから、警察は強盗殺人事件として捜査を開始する。
遺体は首の左側あたりにカッターナイフなどの薄い刃物による傷が複数あった。両手や腕の傷は抵抗した時にできる防御創であり、首の左側の傷はやや深いものであったが、これは致命傷にはならなかったようで、死因は一酸化炭素中毒だった。すなわち、荒井さんは、刃物で切りつけられた上でトランクに閉じ込められ、その後に運転席あたりに火をつけられ、充満した煙によって死に至ったということである。車内の血痕は比較的少なかったと報道されている。
【死へのドライブ】
荒井さんは、5月19日の朝から勤務しており、最後の客を20日午前2時20分頃にJR平塚駅北口で乗せたとみられる。そこから料金メーター2240円分の距離を走行した。
GPSの解析によれば、タクシーの発見された新幹線高架下に着くまでに信号の無い箇所で何度か停止していたらしく、荒井さんのケータイも高架下から数百メートル離れた地点に落ちていた。これはつまり、メーター2240円分の地点で何かしらのトラブルが発生し、荒井さんはそこで切りつけられた上でトランクに閉じ込められ、その後は犯人自らタクシーを運転して人目につきにくい場所として高架下に停め、そして運転席あたりに火をつけたことを意味する。司法解剖の結果、荒井さんの死亡推定時刻は20日午前3時頃とのこと。なお、遺体発見時に車のキーは付けられていたが、エンジンはかかっていなかったという。
【タクシーの防犯事情】
荒井さんの運転するタクシーには、車外向けのドライブレコーダーカメラはあったが、車内の防犯カメラはなかった。タクシー会社も防犯効果を理解してはいるものの、安いモデルでも1台約3万円というコストがネックとなっており、事件当時の新聞報道によれば、神奈川県内では4~5%程度の導入率だった。だが、荒井さんの所属していた相模中央交通は、従業員の身の安全を第一に考え、事件後直ちに全車に防犯カメラの設置を決定している。
タクシー強盗事件の大半は、深夜から未明の時間帯に発生している。本事件の約半年前に発生し、同じく長期未解決事件となっている新潟市タクシー運転手被害強盗殺人事件もそうだ。2006年12月に発生した函館市タクシー運転手強盗殺人事件も未明の犯行だった。しかもタクシーの運転手は背後から襲われる格好となるため、抵抗するのも容易ではない。そのため、仕切り板を設けるなど、物理的障壁を設けるのも重要となる。乗客だけでなく、運転手の安全も保障する環境整備が今後も進められることを期待したい。
因みに、料金支払い時にトラブルが発生することが多いためか、運転手はとっさに逃げられるように料金支払い時にシートベルトを外すといった防犯対策もあるようです。
【リンク】
神奈川県警による情報提供呼びかけページは以下のとおり。
https://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesc1049.htm
【出典】
神奈川新聞2010年5月20日「タクシーのトランクに運転手の遺体、殺人か/神奈川・平塚」
神奈川新聞2010年5月21日「タクシー運転手殺される、売上金なく首から血/平塚」
神奈川新聞2010年5月22日「タクシー運転手強盗殺人事件、死因は一酸化炭素中毒、閉じ込められ車に火か/平塚」
日本経済新聞2010年5月22日「神奈川のタクシー運転手強盗殺人、死因はCO中毒」
神奈川新聞2010年5月22日「カメラ導入や仕切り板の大型化など夜間タクシーの防犯に課題/平塚・運転手強盗殺人事件」