2011年2月4日、北海道厚真町の山林にて、間伐作業中の男性がライフル銃で撃たれて死亡した。ハンターによる誤射とみられ、車に乗って現場から立ち去る男性2人組が目撃されたが、2021年現在も彼らの正体を特定することはできていない。未解決事件。
2021年2月4日に業務上過失致死罪の公訴時効が成立したが、警察は公訴時効の無い殺人罪での捜査を続けると報道されている。
【山林に響く銃声】
2011年2月4日午前7時頃、北海道の林業会社に勤める新渡戸 勝彦さん(当時45歳)は、間伐作業のため、同僚たちと一緒に厚真町の山林を訪れた。
同日9時半頃、山林に突如として銃声が響いた。新渡戸さんの同僚は慌てて周囲を確認して「こら、撃つな!」と大声を上げて制すると、オレンジ色の上着を着たハンター風の男性2人組が青っぽいRV車に乗って立ち去るのが見えたという。
だが、同僚の懸命な制止も空しく、新渡戸さんは射殺されてしまった。撃たれた瞬間こそ誰も見ていないものの、逃走したハンター風の男たちによるものとみて間違いないだろう。新渡戸さんはブルドーザーで木材を運び出す作業の担当だったが、そのブルのすぐ側で仰向けに倒れて亡くなっていた。左脇腹から右胸にかけて約30度の角度でライフル弾が貫通しており、ほぼ即死だったとみられる。
【狩猟用ライフル】
新渡戸さんの身体を撃ち抜いたのは狩猟用ライフル銃。散弾銃であれば射程は100メートルほどで、主に鳥類を狩るために用いられるが、ライフル銃の射程というのは最大4キロにも及び、威力も散弾銃とは比較にならないほど高く、シカやクマなどの大型動物を狩ることができる。故に所持要件は厳しく、初心者がいきなり持つことはできず、まずは散弾銃を10年以上所持した経験が必要と定められている。なお、狩猟用散弾銃の所持要件は20歳以上であるため、違法所持で無い限り、本事件でライフル銃を用いた犯人は事件当時30歳以上ということになろう。
事件当時、北海道内でライフル銃の所持者は約4300名いた。だが、警察の聞き取りに名乗り出るものはおらず、有力な情報提供も無かった。道外のハンターにも聞き込みを行ったが、同様に進展はなかった。
用いられた弾丸は7mmとみられ、線状痕から発射した銃を特定することが期待されたが、警察の懸命の捜索でも見つけることが出来なかった。
【誤射?】
ハンターの仕事において、矢先の安全確認は基本中の基本である。特に狩猟用ライフル銃は一般的に望遠スコープと併せて用いられるため、300~400メートルほど離れていたとしても人と獣を見誤ることはほぼ有り得ないという。因みに新渡戸さんの作業着は紺色であった。また、新渡戸さんたちは重機を使って作業しており、その音からも状況の判別は容易だったと指摘されている。果たして事件は本当に「誤射」だったのだろうか。
なお、現場山林は狩猟が許可された区域ではあったものの、実際に弾丸が発射された地点は、新渡戸さんの遺体が見つかった場所から200メートルほど離れた町道だったと見做されている。公道からの発砲は銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)で禁止されている。こんな凶悪なハンターが今でもその仕事を続けているのかもしれないと思うと全く恐ろしい話である。
【事件は終わらない】
本事件はハンターたちによる「誤射」であると見做され、業務上過失致死の疑いで捜査が続けられてきた。業務上過失致死の公訴時効は10年であり、2021年2月4日に時効が成立。だが、警察は当初から「殺人」の疑いも視野に入れていたといい、今後は公訴時効の無い殺人の疑いで捜査を続けると報道されている。
勝彦さんの両親は息子の命を奪った犯人を追い続けている。
【リンク】
道警による情報提供呼びかけページは以下。2021年2月5日正午現在、業務上過失致死事件のカテゴリーに入れられているが、今後変更されるかもしれない。
https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/incident/06_death%20caused%20by%20negligence%20in%20the%20conduct%20of%20business/2011.02.04/2011.02.04.html
【出典】
北海道新聞2011年2月4日「伐採中に男性撃たれ死亡 厚真の山林、誤射か」
北海道新聞2011年2月5日「民有林の死亡男性 斜面下から撃たれる?厚真 ハンター2人の目撃情報」
毎日新聞2011年2月6日「厚真:間伐作業員撃たれ死亡 シカ猟ハンターの流れ弾か」
北海道新聞2011年2月6日「厚真民有林の男性死亡 ハンターが公道から射撃か」
北海道新聞2011年2月6日「「ハンター名乗り出て」猟友友会呼びかけ」
苫小牧民報2011年2月7日「「ハンターなら判別できる」と猟友会 林業作業員死亡」
北海道新聞2011年2月8日「道警、ライフルと断定 厚真男性死亡 道内4300人調査へ」
苫小牧民報2011年2月11日「「名乗り出て」と妻 林業作業員ライフル死から1週間」
苫小牧民報2011年12月7日「苫小牧署、厚真町の林業作業員死亡事件で弾丸捜索打ち切り」
NHK北海道2021年2月4日「厚真町の銃撃死事件 時効が成立」
HTB北海道テレビ2021年2月4日「ハンター目撃されるも…10年前の北海道厚真町の銃撃死亡事件 時効が成立」
朝日新聞2021年2月6日「厚真の「誤射死」、業過致死罪時効 殺人捜査は継続 北海道」
2021年2月4日に業務上過失致死罪の公訴時効が成立したが、警察は公訴時効の無い殺人罪での捜査を続けると報道されている。
【山林に響く銃声】
2011年2月4日午前7時頃、北海道の林業会社に勤める新渡戸 勝彦さん(当時45歳)は、間伐作業のため、同僚たちと一緒に厚真町の山林を訪れた。
同日9時半頃、山林に突如として銃声が響いた。新渡戸さんの同僚は慌てて周囲を確認して「こら、撃つな!」と大声を上げて制すると、オレンジ色の上着を着たハンター風の男性2人組が青っぽいRV車に乗って立ち去るのが見えたという。
だが、同僚の懸命な制止も空しく、新渡戸さんは射殺されてしまった。撃たれた瞬間こそ誰も見ていないものの、逃走したハンター風の男たちによるものとみて間違いないだろう。新渡戸さんはブルドーザーで木材を運び出す作業の担当だったが、そのブルのすぐ側で仰向けに倒れて亡くなっていた。左脇腹から右胸にかけて約30度の角度でライフル弾が貫通しており、ほぼ即死だったとみられる。
【狩猟用ライフル】
新渡戸さんの身体を撃ち抜いたのは狩猟用ライフル銃。散弾銃であれば射程は100メートルほどで、主に鳥類を狩るために用いられるが、ライフル銃の射程というのは最大4キロにも及び、威力も散弾銃とは比較にならないほど高く、シカやクマなどの大型動物を狩ることができる。故に所持要件は厳しく、初心者がいきなり持つことはできず、まずは散弾銃を10年以上所持した経験が必要と定められている。なお、狩猟用散弾銃の所持要件は20歳以上であるため、違法所持で無い限り、本事件でライフル銃を用いた犯人は事件当時30歳以上ということになろう。
事件当時、北海道内でライフル銃の所持者は約4300名いた。だが、警察の聞き取りに名乗り出るものはおらず、有力な情報提供も無かった。道外のハンターにも聞き込みを行ったが、同様に進展はなかった。
用いられた弾丸は7mmとみられ、線状痕から発射した銃を特定することが期待されたが、警察の懸命の捜索でも見つけることが出来なかった。
【誤射?】
ハンターの仕事において、矢先の安全確認は基本中の基本である。特に狩猟用ライフル銃は一般的に望遠スコープと併せて用いられるため、300~400メートルほど離れていたとしても人と獣を見誤ることはほぼ有り得ないという。因みに新渡戸さんの作業着は紺色であった。また、新渡戸さんたちは重機を使って作業しており、その音からも状況の判別は容易だったと指摘されている。果たして事件は本当に「誤射」だったのだろうか。
なお、現場山林は狩猟が許可された区域ではあったものの、実際に弾丸が発射された地点は、新渡戸さんの遺体が見つかった場所から200メートルほど離れた町道だったと見做されている。公道からの発砲は銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)で禁止されている。こんな凶悪なハンターが今でもその仕事を続けているのかもしれないと思うと全く恐ろしい話である。
【事件は終わらない】
本事件はハンターたちによる「誤射」であると見做され、業務上過失致死の疑いで捜査が続けられてきた。業務上過失致死の公訴時効は10年であり、2021年2月4日に時効が成立。だが、警察は当初から「殺人」の疑いも視野に入れていたといい、今後は公訴時効の無い殺人の疑いで捜査を続けると報道されている。
勝彦さんの両親は息子の命を奪った犯人を追い続けている。
【リンク】
道警による情報提供呼びかけページは以下。2021年2月5日正午現在、業務上過失致死事件のカテゴリーに入れられているが、今後変更されるかもしれない。
https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/incident/06_death%20caused%20by%20negligence%20in%20the%20conduct%20of%20business/2011.02.04/2011.02.04.html
【出典】
北海道新聞2011年2月4日「伐採中に男性撃たれ死亡 厚真の山林、誤射か」
北海道新聞2011年2月5日「民有林の死亡男性 斜面下から撃たれる?厚真 ハンター2人の目撃情報」
毎日新聞2011年2月6日「厚真:間伐作業員撃たれ死亡 シカ猟ハンターの流れ弾か」
北海道新聞2011年2月6日「厚真民有林の男性死亡 ハンターが公道から射撃か」
北海道新聞2011年2月6日「「ハンター名乗り出て」猟友友会呼びかけ」
苫小牧民報2011年2月7日「「ハンターなら判別できる」と猟友会 林業作業員死亡」
北海道新聞2011年2月8日「道警、ライフルと断定 厚真男性死亡 道内4300人調査へ」
苫小牧民報2011年2月11日「「名乗り出て」と妻 林業作業員ライフル死から1週間」
苫小牧民報2011年12月7日「苫小牧署、厚真町の林業作業員死亡事件で弾丸捜索打ち切り」
NHK北海道2021年2月4日「厚真町の銃撃死事件 時効が成立」
HTB北海道テレビ2021年2月4日「ハンター目撃されるも…10年前の北海道厚真町の銃撃死亡事件 時効が成立」
朝日新聞2021年2月6日「厚真の「誤射死」、業過致死罪時効 殺人捜査は継続 北海道」