2008年6月27日(金曜日)の夜、石川県金沢市久安のアパートにて、当時22歳の男性が殺害された。29日の夜に交際相手がアパートを訪れて事件が発覚。被害者は部屋にあったフライパンで後頭部を何度も殴られていた。2020年現在、犯人は特定できておらず未解決。
【フライパンで頭部を】
2008年9月29日午後18時20分頃、金沢市久安2丁目にあるアパート2階で、橋本 清勝さん(当時22歳)が頭から血を流して死んでいるのが発見された。被害者は数日前から連絡が取れなくなっており、交際している女性が心配してアパートを訪れたことで事件が発覚した。
被害者は鈍器によって後頭部を中心に数箇所殴られていた。一方で顔には殴打の痕は無かったとされる。死因は脳挫傷。27日の20時までは通常どおりに工場で勤務していたことが確認されており、犯行は27日の20時半~深夜とみられている。アパートの1階にあるレストランでは27日の23時過ぎに大きな物音を聞いたという。
凶器となった鈍器は室内にあったフライパン。被害者の血痕がついていた。事件直後の報道は取っ手部分から被害者以外の指紋が検出されたとしていたが、NHKの未解決事件追跡プロジェクトによれば取っ手部分から手袋をして握った跡が検出されたとのこと。
【被害者】
清勝さんは2006年12月から殺害現場となったアパートに入居していた。美容師を志して金沢市内の専門学校を卒業し、2007年4月まで金沢市の美容室で働いていた。美容室を退職した後は、2007年10月から川北町の印刷工場に勤めていた。工場での勤務態度はまじめで、最初は派遣社員だったところ、2008年4月からは契約社員となり、正社員登用を目指していた。
殺害された27日も通常どおり工場で勤務していた。19時45分に上司に「お先、上がります」と挨拶して退社したのが最後の目撃情報である。その後、帰宅して襲撃された。
久安のアパートでは一人暮らしをしていたものの、およそ週に一回のペースで加賀市にある実家に帰っており、事件前日の26日も両親と食事をした。母親が28日(土曜日)に帰ってこられないかと聞いたところ、清勝さんは「仕事があるから」と答えたという。
【捜査】
玄関は施錠されていて、鍵は玄関付近に落ちていた。これについて、犯人がこの鍵を持って部屋を出て施錠し、その後で玄関の郵便受けから部屋内に鍵を投入することで密室に見せかけたと考えられている。加えて部屋の電気が消されていた。これは事件発覚を遅らせる目的があったと思われる。
第一発見者となった交際女性は合鍵を渡されていて、それを使って部屋に入った。因みに2箇所ある窓のうち1箇所は開いていて網戸の状態だったとのこと。
被害者は玄関入ってすぐの台所に倒れていたが、その奥にあるリビング兼寝室の床にも血痕があった。後頭部以外の箇所にも犯人と争ってできたような傷があった。つまり後頭部の一撃目が致命傷とならず、犯人は室内を逃げ回る被害者を追い回して何度も殴ったようだ。血痕は大量で、台所の壁や天井にまでついていたとされる。つまり犯人も返り血を浴びた可能性が高いが、部屋の外で血痕は検出されていない。雨で流れてしまった可能性も指摘される。
【犯人は顔見知りか】
室内に土足の形跡は無く、犯人は靴を脱いで部屋にあがったようである。また、現金が手つかずで残っていた。物色された形跡も無し。すなわち犯行は強盗目的ではなかったようだ。
被害者の携帯電話が事件後に失くなっていることが判明している。微弱電波も途絶えており、犯行直後に電源が切られたとみられる。事件発覚を遅らせる目的もあったかもしれないが、犯人と被害者の繋がりを示すメールなどのやり取りを見られたくないという理由があったと見做すのが自然だろう。
また、発見時の被害者は上半身裸で下半身は下着姿だった。この格好のままで深夜に訪れた犯人を部屋に招き入れたとすれば、やはり犯人は被害者と気兼ねない間柄であったと考えられる。
上記情報を総合すると犯人は顔見知りという線が強いものの、被害者の交友関係は幅広い。ミクシィも好んで利用していた。報道によればアパートへ出入りする人は多かったようで、室内からは男女数十人分の毛髪や指紋が採取されたらしい。結局、2020年現在も犯人を特定することができていない。
【息子を失った両親】
清勝さんの両親は、情報提供を呼びかけるチラシを自作するなどして息子を殺害した犯人を追い続けている。作成されたポスターやホームページは一見奇抜なデザインだが、母親・真由美さんによるもの。ポスターの印刷には清勝さんが務めていた印刷会社が協力した。
2015年6月、真由美さんが石川県加賀市山中温泉の芸妓としてデビューしたことが報道されている。真由美さんの母親(清勝さんの祖母)が芸妓であり、真由美さんにとって芸妓の世界は身近だった。2015年時点でわずか6人にまで減ってしまった山中温泉の芸妓の伝統を受け継ぐことで、おばあちゃん子だった清勝さんの思いにも応えられる気がしたという。芸名は「きよ乃」とのこと。
父親・充史さんは殺人事件被害者遺族の会「宙の会」の幹事として活動している。
【余談】
現場アパート1階のレストランとは、石川県内に数店舗ある「カンパーニュ」というイタリア料理店。久安店は1998年5月にオープンして人気を博していたが、2019年4月に閉店した。ホームページによれば、2020年度中に金沢駅前地区で再オープンするようだ。カンパーニュが閉店した跡地にはドーナツ店がオープンしている。
【参考サイト】
石川県警による情報提供呼びかけページは以下。
http://www2.police.pref.ishikawa.lg.jp/security/security18/security18_03/security01.html
遺族によるホームページは以下。
http://www.treasure-kiyokatsu.jp/index.html
犯罪被害者遺族の会「宙の会」のホームページは以下。
https://www.jikou74.com/
【フライパンで頭部を】
2008年9月29日午後18時20分頃、金沢市久安2丁目にあるアパート2階で、橋本 清勝さん(当時22歳)が頭から血を流して死んでいるのが発見された。被害者は数日前から連絡が取れなくなっており、交際している女性が心配してアパートを訪れたことで事件が発覚した。
被害者は鈍器によって後頭部を中心に数箇所殴られていた。一方で顔には殴打の痕は無かったとされる。死因は脳挫傷。27日の20時までは通常どおりに工場で勤務していたことが確認されており、犯行は27日の20時半~深夜とみられている。アパートの1階にあるレストランでは27日の23時過ぎに大きな物音を聞いたという。
凶器となった鈍器は室内にあったフライパン。被害者の血痕がついていた。事件直後の報道は取っ手部分から被害者以外の指紋が検出されたとしていたが、NHKの未解決事件追跡プロジェクトによれば取っ手部分から手袋をして握った跡が検出されたとのこと。
【被害者】
清勝さんは2006年12月から殺害現場となったアパートに入居していた。美容師を志して金沢市内の専門学校を卒業し、2007年4月まで金沢市の美容室で働いていた。美容室を退職した後は、2007年10月から川北町の印刷工場に勤めていた。工場での勤務態度はまじめで、最初は派遣社員だったところ、2008年4月からは契約社員となり、正社員登用を目指していた。
殺害された27日も通常どおり工場で勤務していた。19時45分に上司に「お先、上がります」と挨拶して退社したのが最後の目撃情報である。その後、帰宅して襲撃された。
久安のアパートでは一人暮らしをしていたものの、およそ週に一回のペースで加賀市にある実家に帰っており、事件前日の26日も両親と食事をした。母親が28日(土曜日)に帰ってこられないかと聞いたところ、清勝さんは「仕事があるから」と答えたという。
【捜査】
玄関は施錠されていて、鍵は玄関付近に落ちていた。これについて、犯人がこの鍵を持って部屋を出て施錠し、その後で玄関の郵便受けから部屋内に鍵を投入することで密室に見せかけたと考えられている。加えて部屋の電気が消されていた。これは事件発覚を遅らせる目的があったと思われる。
第一発見者となった交際女性は合鍵を渡されていて、それを使って部屋に入った。因みに2箇所ある窓のうち1箇所は開いていて網戸の状態だったとのこと。
被害者は玄関入ってすぐの台所に倒れていたが、その奥にあるリビング兼寝室の床にも血痕があった。後頭部以外の箇所にも犯人と争ってできたような傷があった。つまり後頭部の一撃目が致命傷とならず、犯人は室内を逃げ回る被害者を追い回して何度も殴ったようだ。血痕は大量で、台所の壁や天井にまでついていたとされる。つまり犯人も返り血を浴びた可能性が高いが、部屋の外で血痕は検出されていない。雨で流れてしまった可能性も指摘される。
【犯人は顔見知りか】
室内に土足の形跡は無く、犯人は靴を脱いで部屋にあがったようである。また、現金が手つかずで残っていた。物色された形跡も無し。すなわち犯行は強盗目的ではなかったようだ。
被害者の携帯電話が事件後に失くなっていることが判明している。微弱電波も途絶えており、犯行直後に電源が切られたとみられる。事件発覚を遅らせる目的もあったかもしれないが、犯人と被害者の繋がりを示すメールなどのやり取りを見られたくないという理由があったと見做すのが自然だろう。
また、発見時の被害者は上半身裸で下半身は下着姿だった。この格好のままで深夜に訪れた犯人を部屋に招き入れたとすれば、やはり犯人は被害者と気兼ねない間柄であったと考えられる。
上記情報を総合すると犯人は顔見知りという線が強いものの、被害者の交友関係は幅広い。ミクシィも好んで利用していた。報道によればアパートへ出入りする人は多かったようで、室内からは男女数十人分の毛髪や指紋が採取されたらしい。結局、2020年現在も犯人を特定することができていない。
【息子を失った両親】
清勝さんの両親は、情報提供を呼びかけるチラシを自作するなどして息子を殺害した犯人を追い続けている。作成されたポスターやホームページは一見奇抜なデザインだが、母親・真由美さんによるもの。ポスターの印刷には清勝さんが務めていた印刷会社が協力した。
2015年6月、真由美さんが石川県加賀市山中温泉の芸妓としてデビューしたことが報道されている。真由美さんの母親(清勝さんの祖母)が芸妓であり、真由美さんにとって芸妓の世界は身近だった。2015年時点でわずか6人にまで減ってしまった山中温泉の芸妓の伝統を受け継ぐことで、おばあちゃん子だった清勝さんの思いにも応えられる気がしたという。芸名は「きよ乃」とのこと。
父親・充史さんは殺人事件被害者遺族の会「宙の会」の幹事として活動している。
【余談】
現場アパート1階のレストランとは、石川県内に数店舗ある「カンパーニュ」というイタリア料理店。久安店は1998年5月にオープンして人気を博していたが、2019年4月に閉店した。ホームページによれば、2020年度中に金沢駅前地区で再オープンするようだ。カンパーニュが閉店した跡地にはドーナツ店がオープンしている。
【参考サイト】
石川県警による情報提供呼びかけページは以下。
http://www2.police.pref.ishikawa.lg.jp/security/security18/security18_03/security01.html
遺族によるホームページは以下。
http://www.treasure-kiyokatsu.jp/index.html
犯罪被害者遺族の会「宙の会」のホームページは以下。
https://www.jikou74.com/