【真っ昼間の強盗】
2007年3月18日午後13時頃、岐阜県高山市丹生川町日面にある美術館「大橋コレクション館」にて、展示品である100.5キロの金塊(2億5000万~6000万円相当)が強奪されたと警察に通報があった。
午後12時45分頃に金塊のある2階展示室から物音がしたため女性従業員(59歳)が見に行ったところ、3人組の男が金塊を運び出そうとしているところに出くわしたという。女性従業員は男に突き飛ばされて足に軽いけがをした。男たちは金塊を袋に入れると車で逃走。車は午後14時40分頃、コレクション館から5キロほど離れた空き地で発見された。当日の午前中に盗難された車両だった。
男たちはサングラス・マスク・帽子等していたとはいえ、その犯行の様子は館内の防犯ビデオにハッキリと映っていた。白昼堂々の大胆極まる犯行であった。一方で、この日は従業員が3名いただけで3人共女性、常駐の警備員はおらず、館の防犯体制に難があったことは否めない。館内に他の見学者はいなかった。
【大橋コレクション館とは】
大橋 外吉(おおはし とよし)は、1965年に飛騨大鍾乳洞を発見した人物。整備された鍾乳洞は68年より観光用にオープンされた。標高900メートルにあり、日本にある観光鍾乳洞としては最も標高が高いものだという。大橋コレクション館は、その大橋が個人的に収集した美術品・装飾品・銘石・化石等を展示するもので、鍾乳洞に併設する形で87年に開館した。
金塊は、鍾乳洞発見25周年を記念して89年に制作され、89年6月から展示されていた。表面には「飛騨大鍾乳洞」と彫り込まれている。時期によって展示方法が若干異なるものの、見学者が直接手で触れることができるのが最大の特徴だった。金塊制作当時は2億円相当の価格だったというが、強奪時点では金の価格上昇により2億5000~6000万円相当の価値があったとされる。
【逮捕と裁判】
2007年6月28日、別の容疑で逮捕されていた男2人が本件の強盗致傷容疑により再逮捕された。防犯カメラ映像の分析も進められていたが、貴金属リサイクル業者が持ち込まれた金塊の刻印跡に気づいて通報したことがきっかけだったと報道されている。金塊の「一部」が主犯格の男の自宅から押収され、既に転売されてしまった分も貴金属業者の協力によって行方を解明したとのこと。残る1人は指名手配され、2008年3月18日に逮捕された。
3人のうち2人は刑務所内で知り合った仲間で、もう1人は暴力団を介して事件に加わった。他人名義の保険証を利用するなど別人になりすまして金塊の売却が進められていた。売却代金7000万円の分前は、2人目の男が500万円、3人目の男が1500万円、残りは主犯格の男が手にしたとされるが、代金が振り込まれた口座には暴力団関係者名義のものもあり、少なからぬ金額が暴力団に流れたとみられる。
2008年3月28日、主犯格である韓国籍の男、呉 吉身(ご よしみ、又はオ・キルシン)に強盗傷害罪等により懲役16年(求刑は懲役18年)の実刑判決。呉は2006年2月に大分県の「地底博物館・鯛生金山」において、約30キロの純金鯛1体(約6000万円相当)と売店コーナーにあった貴金属類155点(約700万円相当)を盗んだ窃盗罪でも併せて審理されていた。呉は過去にも宝石店や質店での強盗で実刑判決を受けたことのある前科者だった。2人目の男は3月8日に懲役8年、3人目には10月3日に懲役11年の実刑判決が下された。
報道によれば、3人は事件一週間前から3回に渡って大橋コレクション館の下見に来ていたという。お目当ての金塊の保管状態や、従業員数を調べていたのだった。警備の手薄さを突かれた格好だ。
【戻ってきた金塊】
2008年4月4日より、大橋コレクション館は「戻ってきた金塊」と題して金塊の展示を再開した。強奪された金塊はバーナーを用いて溶解させるなどして一部が売却されていたため、返還されたのはいびつな形になったいくつかの塊(合計71.7キロ分)であった。
展示は、そのいくつかの塊と、在りし日の姿を再現したレプリカ、そして盗難事件を報道した新聞記事が並べられている。今度は特注の強化ガラスケースに入れられていて見学者が触ることはできない。警察への通報装置も備えているとか。
【戻ってこなかった鯛】
因みに、大分県の地底博物館・鯛生金山の「純金鯛」は既に処理されていて戻ってこなかった。展示はレプリカに替わった。残っていた雌の鯛(約20キロ)は市役所内の金庫で「隠居生活」していたが、警備費用もかかるため2012年に三菱マテリアル社へ売却された。鯛は1991年にふるさと創生基金を使って二匹合わせて7354万円で購入したもので、売却時は金の価格上昇により雌一匹だけでも9045万円の値がついた。
同博物館では純金鯛盗難事件から3年後の2009年12月にも展示品の盗難事件が発生している。そちらの事件も犯人は逮捕されたとはいえ、見学者の安全を考える上でもセキュリティは万全にしてもらわなくては困りますね。
【参考サイト】
飛騨大鍾乳洞と大橋コレクション館の公式ページは以下。「戻ってきた金塊」も紹介されている。
https://www.syonyudo.com/
2007年3月18日午後13時頃、岐阜県高山市丹生川町日面にある美術館「大橋コレクション館」にて、展示品である100.5キロの金塊(2億5000万~6000万円相当)が強奪されたと警察に通報があった。
午後12時45分頃に金塊のある2階展示室から物音がしたため女性従業員(59歳)が見に行ったところ、3人組の男が金塊を運び出そうとしているところに出くわしたという。女性従業員は男に突き飛ばされて足に軽いけがをした。男たちは金塊を袋に入れると車で逃走。車は午後14時40分頃、コレクション館から5キロほど離れた空き地で発見された。当日の午前中に盗難された車両だった。
男たちはサングラス・マスク・帽子等していたとはいえ、その犯行の様子は館内の防犯ビデオにハッキリと映っていた。白昼堂々の大胆極まる犯行であった。一方で、この日は従業員が3名いただけで3人共女性、常駐の警備員はおらず、館の防犯体制に難があったことは否めない。館内に他の見学者はいなかった。
【大橋コレクション館とは】
大橋 外吉(おおはし とよし)は、1965年に飛騨大鍾乳洞を発見した人物。整備された鍾乳洞は68年より観光用にオープンされた。標高900メートルにあり、日本にある観光鍾乳洞としては最も標高が高いものだという。大橋コレクション館は、その大橋が個人的に収集した美術品・装飾品・銘石・化石等を展示するもので、鍾乳洞に併設する形で87年に開館した。
金塊は、鍾乳洞発見25周年を記念して89年に制作され、89年6月から展示されていた。表面には「飛騨大鍾乳洞」と彫り込まれている。時期によって展示方法が若干異なるものの、見学者が直接手で触れることができるのが最大の特徴だった。金塊制作当時は2億円相当の価格だったというが、強奪時点では金の価格上昇により2億5000~6000万円相当の価値があったとされる。
【逮捕と裁判】
2007年6月28日、別の容疑で逮捕されていた男2人が本件の強盗致傷容疑により再逮捕された。防犯カメラ映像の分析も進められていたが、貴金属リサイクル業者が持ち込まれた金塊の刻印跡に気づいて通報したことがきっかけだったと報道されている。金塊の「一部」が主犯格の男の自宅から押収され、既に転売されてしまった分も貴金属業者の協力によって行方を解明したとのこと。残る1人は指名手配され、2008年3月18日に逮捕された。
3人のうち2人は刑務所内で知り合った仲間で、もう1人は暴力団を介して事件に加わった。他人名義の保険証を利用するなど別人になりすまして金塊の売却が進められていた。売却代金7000万円の分前は、2人目の男が500万円、3人目の男が1500万円、残りは主犯格の男が手にしたとされるが、代金が振り込まれた口座には暴力団関係者名義のものもあり、少なからぬ金額が暴力団に流れたとみられる。
2008年3月28日、主犯格である韓国籍の男、呉 吉身(ご よしみ、又はオ・キルシン)に強盗傷害罪等により懲役16年(求刑は懲役18年)の実刑判決。呉は2006年2月に大分県の「地底博物館・鯛生金山」において、約30キロの純金鯛1体(約6000万円相当)と売店コーナーにあった貴金属類155点(約700万円相当)を盗んだ窃盗罪でも併せて審理されていた。呉は過去にも宝石店や質店での強盗で実刑判決を受けたことのある前科者だった。2人目の男は3月8日に懲役8年、3人目には10月3日に懲役11年の実刑判決が下された。
報道によれば、3人は事件一週間前から3回に渡って大橋コレクション館の下見に来ていたという。お目当ての金塊の保管状態や、従業員数を調べていたのだった。警備の手薄さを突かれた格好だ。
【戻ってきた金塊】
2008年4月4日より、大橋コレクション館は「戻ってきた金塊」と題して金塊の展示を再開した。強奪された金塊はバーナーを用いて溶解させるなどして一部が売却されていたため、返還されたのはいびつな形になったいくつかの塊(合計71.7キロ分)であった。
展示は、そのいくつかの塊と、在りし日の姿を再現したレプリカ、そして盗難事件を報道した新聞記事が並べられている。今度は特注の強化ガラスケースに入れられていて見学者が触ることはできない。警察への通報装置も備えているとか。
【戻ってこなかった鯛】
因みに、大分県の地底博物館・鯛生金山の「純金鯛」は既に処理されていて戻ってこなかった。展示はレプリカに替わった。残っていた雌の鯛(約20キロ)は市役所内の金庫で「隠居生活」していたが、警備費用もかかるため2012年に三菱マテリアル社へ売却された。鯛は1991年にふるさと創生基金を使って二匹合わせて7354万円で購入したもので、売却時は金の価格上昇により雌一匹だけでも9045万円の値がついた。
同博物館では純金鯛盗難事件から3年後の2009年12月にも展示品の盗難事件が発生している。そちらの事件も犯人は逮捕されたとはいえ、見学者の安全を考える上でもセキュリティは万全にしてもらわなくては困りますね。
【参考サイト】
飛騨大鍾乳洞と大橋コレクション館の公式ページは以下。「戻ってきた金塊」も紹介されている。
https://www.syonyudo.com/