2009年11月6日、広島県と島根県の県境にある臥龍山山頂付近で、女性の頭部が発見された。DNA鑑定の結果、10月26日より行方不明になっていた島根県立大学の女子大生(19歳)であると確認。広島県警と島根県警は合同捜査本部を設置して捜査を開始する。
【女子大生がバラバラに】
被害者の女子大生Hさんは、2009年10月26日に島根県浜田市内にあるショッピングセンターでアルバイトを終えた後、行方が分からなくなった。10月28日に両親が捜索願を提出。島根県警は11月2日より公開捜査に切り替えた。
そして上記のとおり11月6日に臥龍山にて頭部発見。臥龍山山頂付近には車数台の駐車スペースがあり、その下側10メートルほどの斜面で発見された。最後の目撃地点から臥龍山までは直線距離で約25キロほど。発見したのはキノコ狩りに来ていた男性だった。その後も11月19日までに付近で手足の無い胴体部などが発見された。
死亡推定時期は行方不明になった10月26日~31日頃。激しい暴行が加えられており、死因は首を絞められたことによる窒息死。死後に小型の刃物で何度も傷をつけてバラバラにされたとみられる。胴体部は乳房がえぐり取られ、性器のあたりも切り裂かれていた。被害者の身元を判りづらくするためか、それとも別の理由があるのか。
被害者は香川県の高校を卒業して、4月から島根の大学に通い出した。住まいは大学に近いところにある寮だった。学業・サークル・アルバイトを真面目にこなしており、交友関係から目立ったトラブルは確認されなかった。それだけに捜査は難航した。ごく健全な学生生活を送っていた女子大生が、何故このように残虐で猟奇的な方法で殺害されなければならなかったのか。
【捜査】
2010年2月26日、捜査特別報奨金制度の対象に指定。捜査特別報奨金制度は原則として発生から6ヶ月以上経過した事件が対象だが、社会的影響の大きさから本事件は発生から4ヶ月での指定となった。
2012年10月26日、死体損壊・遺棄罪としての公訴時効3年を迎える。公訴時効の無い殺人罪に切り替えて捜査を継続。
【7年後】
2016年12月20日、発生から7年が過ぎた本事件は急展開を見せる。2009年11月8日(遺体が発見された2日後)に山口県内の高速道路で事故死した会社員の男性Y(当時33歳)が本事件に関わった疑いが強いと合同捜査本部が発表したのである。Yは被疑者死亡のまま書類送検された。
合同捜査本部は2016年に入ってから、過去に性犯罪歴のある人物を洗い直していた。すると事件当時に島根県益田市に住んでいたYが浮上したのだった。Yは、2004年に東京都で女性に刃物を突きつけて乱暴しようとするなどして、懲役3年6ヶ月の実刑判決を受けていた人物であった。
Yは被害者Hと接点は無かったが、Yの遺品であるデジタルカメラやUSBメモリーから画像を復元したところ、被害者の遺体や包丁など57枚の画像が確認されたという。遺体についてはバラバラにする前後の写真があった。特にY宅の壁や風呂場を背景にしてHが撮影されていた画像が決定的だった。なお、被害者遺体の胴体に付着していたNTT電話配達に用いられるポリ袋の破片が遺留品としてクローズアップされていたが、このポリ袋がYの実家である山口県下関市内でも使用されていたことも判明している。
しかし上述のとおり、Yは2009年11月8日に亡くなっていた。高速道路での単独事故で、同乗していた当時58歳の母親も共に亡くなっている。父親の墓参りから戻る途中の事故だったらしい。Yは前科のある人物だったとはいえ、事件の発生した年の2009年4月から住宅設備会社で働いており、営業成績も良かったと報道されている。被害者が行方不明になった直後も普通に勤務していた。謎は深まるばかりだ。
2017年1月31日、松江地検は被疑者死亡により不起訴処分とした。なお、捜査特別報奨金制度に基づき、事件解決に有力な情報を提供した3名に報奨金(総額300万円)が支払われた。3名の住所や提供された情報については明らかにされていない。
【結末】
合同捜査本部の7年にも及ぶ執念の調査、既に亡くなった人物のデジタルカメラのデータを復元してまで行われたそれは決して無駄にはならなかった。しかし既に容疑者が亡くなってしまっている以上、事件の真相を解き明かすことは永遠に不可能である。動機も不明のまま。遺族の怒り・悲しみ・憎しみ・苦しみをぶつける先は無い。なんとも虚しい結末だった。
【出典】
産経ニュース2009年11月4日「島根県立大の女子学生行方不明1週間」
産経ニュース2009年11月6日「不明の島根県立大生か 広島の山中で女性の頭部見つかる」
産経ニュース2009年11月7日「広島の女性頭部、不明の女子大生と確認 広島・島根県警・山頂を捜索」
産経ニュース2009年11月7日「死後1~2週間経過 激しく殴打後に殺害か 遺体確認のHさん」
産経ニュース2009年11月8日「【島根 女子大生遺棄】人の胴体部分を発見 着衣なし」
産経ニュース2009年11月8日「【島根 女子大生遺棄】また遺体の一部、学生絶句」
産経ニュース2009年11月8日「【島根 女子大生遺棄】ノコギリで切断か」
産経ニュース2009年11月9日「【島根 女子大生遺棄】首に指の痕、絞殺か 胴体もHさんと確認」
産経ニュース2009年11月9日「【島根 女子大生遺棄】土地勘ある者か 林道、夜間は交通困難」
ANNニュース2010年2月26日「前倒しで300万円懸賞金 島根女子大生バラバラ遺棄」
日本経済新聞2010年2月26日「懸賞金の前倒し、26日から適用 島根女子大生遺棄」
日本経済新聞2010年4月24日「島根女子大生遺棄から26日で半年、見えない犯人像 捜査難航」
日本経済新聞2012年9月28日「殺人容疑で捜査継続を検討 島根の女子大生遺棄事件」
日本経済新聞2016年12月17日「島根の女子大生遺棄、死亡の男が関与か」
産経WEST2016年12月17日「不明後の女子学生か、画像データを発見 事故死男の周辺から 殺人容疑で20日書類送検」
産経WEST2016年12月17日「島根女子大生殺害、遺体発見後事故死の男を書類送検へ 事件から7年、捜査本部が方針固める」
朝日新聞2016年12月17日「交通事故死の男が事件関与か 7年前の島根女子大生殺人」
朝日新聞2016年12月17日「島根の女子大学生殺害、交通事故死した男を書類送検へ」
朝日新聞2016年12月18日「被害者画像、事故死の男の自宅で撮影 島根女子大生殺害」
朝日新聞2016年12月18日「捜査の網拡大、今年に入り男浮上 島根の女子大生殺害」
産経WEST2016年12月18日「男の車、現場周辺を走行か…不明後画像は自宅で撮影」
産経WEST2016年12月18日「捜査難航からの急転直下の背景 性犯罪"つぶしの捜査"範囲拡大で男浮上…」
朝日新聞2016年12月19日「遺体付着と同種袋、男の実家周辺で配布 女子大生殺害」
産経WEST2016年12月19日「自宅風呂場で遺体切断か 事故死の男、カメラ画像に含まれる」
産経WEST2016年12月19日「事故死の30代男、殺人容疑で20日に書類送検へ…事件当時、遺棄現場周辺を走行」
産経WEST2016年12月19日「凶器の刃物、見つからず 事故死の男が処分か」
産経WEST2016年12月20日「なぜ捜査に7年…目撃情報乏しく、初動捜査後手か、殺害現場も特定できず」
産経WEST2016年12月20日「デジカメ消去画像、捜査本部が復元」
産経WEST2016年12月20日「未解明残し幕引き 捜査本部会見、歯切れ悪く」
朝日新聞2016年12月20日「事故死の男を殺人容疑などで書類送検 島根女子大生殺害」
朝日新聞2016年12月20日「女子学生殺害、真相は闇 警察「無駄な捜査一つもない」」
朝日新聞2016年12月21日「島根の大学生殺害、連れ去り直後か 当日夜に遺体撮影」
中國新聞2016年12月21日「浜田女子学生殺害 事故死33歳男 書類送検 窒息死させ損壊疑い 画像57枚データ復元」
産経WEST2016年12月18日「「事故で亡くなり、かわいそうと思っていたのに…」事件への関与浮上の男の地元で動揺広がる」
産経WEST2017年1月31日「事故死の男をきょう不起訴へ 発生から7年を経て捜査終結、詳しい動機も分からず」
朝日新聞2017年1月31日「事故死の男、不起訴処分に 島根・女子学生殺害」
朝日新聞2017年3月16日「情報提供者3人に報奨金300万円 島根女子大学生殺害」
【女子大生がバラバラに】
被害者の女子大生Hさんは、2009年10月26日に島根県浜田市内にあるショッピングセンターでアルバイトを終えた後、行方が分からなくなった。10月28日に両親が捜索願を提出。島根県警は11月2日より公開捜査に切り替えた。
そして上記のとおり11月6日に臥龍山にて頭部発見。臥龍山山頂付近には車数台の駐車スペースがあり、その下側10メートルほどの斜面で発見された。最後の目撃地点から臥龍山までは直線距離で約25キロほど。発見したのはキノコ狩りに来ていた男性だった。その後も11月19日までに付近で手足の無い胴体部などが発見された。
死亡推定時期は行方不明になった10月26日~31日頃。激しい暴行が加えられており、死因は首を絞められたことによる窒息死。死後に小型の刃物で何度も傷をつけてバラバラにされたとみられる。胴体部は乳房がえぐり取られ、性器のあたりも切り裂かれていた。被害者の身元を判りづらくするためか、それとも別の理由があるのか。
被害者は香川県の高校を卒業して、4月から島根の大学に通い出した。住まいは大学に近いところにある寮だった。学業・サークル・アルバイトを真面目にこなしており、交友関係から目立ったトラブルは確認されなかった。それだけに捜査は難航した。ごく健全な学生生活を送っていた女子大生が、何故このように残虐で猟奇的な方法で殺害されなければならなかったのか。
【捜査】
2010年2月26日、捜査特別報奨金制度の対象に指定。捜査特別報奨金制度は原則として発生から6ヶ月以上経過した事件が対象だが、社会的影響の大きさから本事件は発生から4ヶ月での指定となった。
2012年10月26日、死体損壊・遺棄罪としての公訴時効3年を迎える。公訴時効の無い殺人罪に切り替えて捜査を継続。
【7年後】
2016年12月20日、発生から7年が過ぎた本事件は急展開を見せる。2009年11月8日(遺体が発見された2日後)に山口県内の高速道路で事故死した会社員の男性Y(当時33歳)が本事件に関わった疑いが強いと合同捜査本部が発表したのである。Yは被疑者死亡のまま書類送検された。
合同捜査本部は2016年に入ってから、過去に性犯罪歴のある人物を洗い直していた。すると事件当時に島根県益田市に住んでいたYが浮上したのだった。Yは、2004年に東京都で女性に刃物を突きつけて乱暴しようとするなどして、懲役3年6ヶ月の実刑判決を受けていた人物であった。
Yは被害者Hと接点は無かったが、Yの遺品であるデジタルカメラやUSBメモリーから画像を復元したところ、被害者の遺体や包丁など57枚の画像が確認されたという。遺体についてはバラバラにする前後の写真があった。特にY宅の壁や風呂場を背景にしてHが撮影されていた画像が決定的だった。なお、被害者遺体の胴体に付着していたNTT電話配達に用いられるポリ袋の破片が遺留品としてクローズアップされていたが、このポリ袋がYの実家である山口県下関市内でも使用されていたことも判明している。
しかし上述のとおり、Yは2009年11月8日に亡くなっていた。高速道路での単独事故で、同乗していた当時58歳の母親も共に亡くなっている。父親の墓参りから戻る途中の事故だったらしい。Yは前科のある人物だったとはいえ、事件の発生した年の2009年4月から住宅設備会社で働いており、営業成績も良かったと報道されている。被害者が行方不明になった直後も普通に勤務していた。謎は深まるばかりだ。
2017年1月31日、松江地検は被疑者死亡により不起訴処分とした。なお、捜査特別報奨金制度に基づき、事件解決に有力な情報を提供した3名に報奨金(総額300万円)が支払われた。3名の住所や提供された情報については明らかにされていない。
【結末】
合同捜査本部の7年にも及ぶ執念の調査、既に亡くなった人物のデジタルカメラのデータを復元してまで行われたそれは決して無駄にはならなかった。しかし既に容疑者が亡くなってしまっている以上、事件の真相を解き明かすことは永遠に不可能である。動機も不明のまま。遺族の怒り・悲しみ・憎しみ・苦しみをぶつける先は無い。なんとも虚しい結末だった。
【出典】
産経ニュース2009年11月4日「島根県立大の女子学生行方不明1週間」
産経ニュース2009年11月6日「不明の島根県立大生か 広島の山中で女性の頭部見つかる」
産経ニュース2009年11月7日「広島の女性頭部、不明の女子大生と確認 広島・島根県警・山頂を捜索」
産経ニュース2009年11月7日「死後1~2週間経過 激しく殴打後に殺害か 遺体確認のHさん」
産経ニュース2009年11月8日「【島根 女子大生遺棄】人の胴体部分を発見 着衣なし」
産経ニュース2009年11月8日「【島根 女子大生遺棄】また遺体の一部、学生絶句」
産経ニュース2009年11月8日「【島根 女子大生遺棄】ノコギリで切断か」
産経ニュース2009年11月9日「【島根 女子大生遺棄】首に指の痕、絞殺か 胴体もHさんと確認」
産経ニュース2009年11月9日「【島根 女子大生遺棄】土地勘ある者か 林道、夜間は交通困難」
ANNニュース2010年2月26日「前倒しで300万円懸賞金 島根女子大生バラバラ遺棄」
日本経済新聞2010年2月26日「懸賞金の前倒し、26日から適用 島根女子大生遺棄」
日本経済新聞2010年4月24日「島根女子大生遺棄から26日で半年、見えない犯人像 捜査難航」
日本経済新聞2012年9月28日「殺人容疑で捜査継続を検討 島根の女子大生遺棄事件」
日本経済新聞2016年12月17日「島根の女子大生遺棄、死亡の男が関与か」
産経WEST2016年12月17日「不明後の女子学生か、画像データを発見 事故死男の周辺から 殺人容疑で20日書類送検」
産経WEST2016年12月17日「島根女子大生殺害、遺体発見後事故死の男を書類送検へ 事件から7年、捜査本部が方針固める」
朝日新聞2016年12月17日「交通事故死の男が事件関与か 7年前の島根女子大生殺人」
朝日新聞2016年12月17日「島根の女子大学生殺害、交通事故死した男を書類送検へ」
朝日新聞2016年12月18日「被害者画像、事故死の男の自宅で撮影 島根女子大生殺害」
朝日新聞2016年12月18日「捜査の網拡大、今年に入り男浮上 島根の女子大生殺害」
産経WEST2016年12月18日「男の車、現場周辺を走行か…不明後画像は自宅で撮影」
産経WEST2016年12月18日「捜査難航からの急転直下の背景 性犯罪"つぶしの捜査"範囲拡大で男浮上…」
朝日新聞2016年12月19日「遺体付着と同種袋、男の実家周辺で配布 女子大生殺害」
産経WEST2016年12月19日「自宅風呂場で遺体切断か 事故死の男、カメラ画像に含まれる」
産経WEST2016年12月19日「事故死の30代男、殺人容疑で20日に書類送検へ…事件当時、遺棄現場周辺を走行」
産経WEST2016年12月19日「凶器の刃物、見つからず 事故死の男が処分か」
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産経WEST2016年12月20日「デジカメ消去画像、捜査本部が復元」
産経WEST2016年12月20日「未解明残し幕引き 捜査本部会見、歯切れ悪く」
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朝日新聞2016年12月20日「女子学生殺害、真相は闇 警察「無駄な捜査一つもない」」
朝日新聞2016年12月21日「島根の大学生殺害、連れ去り直後か 当日夜に遺体撮影」
中國新聞2016年12月21日「浜田女子学生殺害 事故死33歳男 書類送検 窒息死させ損壊疑い 画像57枚データ復元」
産経WEST2016年12月18日「「事故で亡くなり、かわいそうと思っていたのに…」事件への関与浮上の男の地元で動揺広がる」
産経WEST2017年1月31日「事故死の男をきょう不起訴へ 発生から7年を経て捜査終結、詳しい動機も分からず」
朝日新聞2017年1月31日「事故死の男、不起訴処分に 島根・女子学生殺害」
朝日新聞2017年3月16日「情報提供者3人に報奨金300万円 島根女子大学生殺害」