【5億円強奪】
1994年8月5日午前9時20分頃、兵庫県神戸市中央区三宮町にある福徳銀行神戸支店の車庫で、行員3人が現金輸送車から現金の入ったジュラルミンケースを下ろそうとしていたところ、2人組の男が近づいてきて短銃のようなものを突きつけた。
男たちはジュラルミンケース3個に入った現金約5億4100万円を強奪し、軽ワゴン車で逃走。日本の現金強奪事件としては当時史上最高額であった。その後、2004年に起こった栃木5億円強奪事件や、2011年の立川6億円強奪事件がこれを上回るも、金融機関を標的とした現金強奪事件としては依然として本事件が最高額である。
【捕まらない犯人】
行員は男2人の特徴を証言した。逃走に使用した軽ワゴン車も発見されたが、これは盗難車だと判明した。しかしその後の捜査は難航。本事件のおよそ半年後に発生した阪神淡路大震災も影響したと考えられる。
1999年になり、ようやく男2人の身元を特定。換金を依頼した札が、強奪された札の番号と一致したことが決め手となった。男のうち一人は元・パチンコ店店員のBである。Bは知人に犯行を打ち明けていたという。実はBは1997年時点で捜査線上に浮かんでおり、参考人聴取を行っていたが、その直後に自殺した。止む無くBは被疑者死亡のまま書類送検される。もう一人は元・暴力団組員のMである。Mは指名手配された。
しかしMの行方はなかなか掴めなかった。期間中に韓国や香港など計9回海外渡航していたことが明らかになり、刑事訴訟法255条1項に基づき公訴時効は約8ヶ月延長されたが、結局2002年4月1日に公訴時効が成立。強盗罪の当時の公訴時効は7年だった。2010年の刑事訴訟法改正により現在は10年となっている。
【まさかの結末】
その後、Mは意外な形で姿を現した。2007年2月9日午前9時40分頃、愛知県名古屋市の愛知信用金庫西大須支店において強盗傷害容疑で逮捕されたのだ。2007年の事件も94年の事件とそっくりで、駐車場で信金職員が車からジュラルミンケースを下ろそうとしたところ、男Mが拳銃のようなものを突きつけて脅したというものである。
しかし今度は現金強奪に失敗。職員に取り押さえられ、敢え無く警察に逮捕されたのだった。逮捕された後、Mは神戸の事件の犯人であることを自ら語り始めたという。因みに、ジュラルミンケースに現金は入っておらず、CD-ROMや書類だけが入っていたとのこと。
兵庫県警内では、糖尿病を患っているMは既に病死したという見方もあったという。病気で弱っていたために愛知信用金庫の事件では簡単に取り押さえられたとする分析もある。札番号を押さえられ金を自由に使うことはできず、所持金も少ない中で今回の犯行に及んだようだ。Mは福徳銀行事件の逃亡中、偽造パスポートを用いたり、整形したり、偽名を使っていたことが判明している。
愛知信用金庫の事件では、名古屋地裁でMに対して懲役8年の判決が下された。しかし福徳銀行の事件は既に時効が完成しており何らの言及もされることはなかった。
【余談】
ある書籍において、自殺したBはグリコ・森永事件に関与していたとする推理がなされているが、真偽の程は不明。
【出典】
朝日新聞1994年8月5日「輸送車の5億4100万円強奪 短銃持つ2人組 福徳銀行神戸支店」
朝日新聞1994年8月5日「三菱銀行上回る被害額 神戸の福徳銀行現金強奪事件/大阪」
毎日新聞1994年8月5日「現金5億4100万円を強奪 2人組、銀行の現金輸送車を狙うーー神戸・三宮」
朝日新聞1997年12月4日「参考人聴取の男性、翌日自殺 関与否定 神戸・5億円強奪/大阪」
毎日新聞1997年12月4日「福徳銀行神戸支店5億円強奪事件 聴取の男性、翌日自殺 資金洗浄の男性と交際」
読売新聞1997年12月4日「福徳銀行5億円強奪 兵庫県警の聴取の翌日、参考人自殺」
朝日新聞1997年12月21日「ゴルフ練習場強盗に関与か 5億円強奪で聴取後自殺の男性/大阪」
朝日新聞1998年8月3日「かぎ握る元暴力団員? 福徳銀行神戸支店5億円強奪事件/兵庫」
朝日新聞1999年10月14日「元組員を指名手配、自殺の店員書類送検 福徳銀行5億円強奪/大阪」
毎日新聞1999年10月14日「旧福徳銀行5億円強奪事件 容疑で元会社員を手配 自殺男性も書類送検ーー兵庫県警」
朝日新聞2001年8月1日「国外逃亡8ヵ月、公訴時効伸びる 旧福徳銀強奪の容疑者/大阪」
毎日新聞2001年8月1日「神戸・福徳銀行5億円強奪事件 公訴時効8ヵ月延長ーー兵庫県警」
朝日新聞2002年4月1日「旧福徳銀の5億円強奪事件が時効成立/大阪」
毎日新聞2002年4月1日「旧福徳銀行神戸支店5億円強奪事件の公訴時効が成立 兵庫県警」
読売新聞2002年4月1日「旧福徳銀行5億円強奪、時効成立 "10の顔持つ男"どこへ」
毎日新聞2007年2月10日「旧福徳銀事件:5億円強奪の男逮捕 手配のM容疑者、整形・偽名で逃亡13年」
読売新聞2007年2月10日「旧福徳銀行5億円強奪時効 10の顔を持つ男逮捕 名古屋の信金強盗、現行犯」
読売新聞2007年2月10日「名古屋の信金強盗 M容疑者、5億円強盗と手口酷似」
毎日新聞2007年3月2日「旧福徳銀事件:愛知信金強盗容疑の男「5億円もやった」「手配知っていた」」
読売新聞2007年5月18 「旧福徳銀行事件で手配男 信金強盗未遂で懲役8年判決/名古屋地裁」
1994年8月5日午前9時20分頃、兵庫県神戸市中央区三宮町にある福徳銀行神戸支店の車庫で、行員3人が現金輸送車から現金の入ったジュラルミンケースを下ろそうとしていたところ、2人組の男が近づいてきて短銃のようなものを突きつけた。
男たちはジュラルミンケース3個に入った現金約5億4100万円を強奪し、軽ワゴン車で逃走。日本の現金強奪事件としては当時史上最高額であった。その後、2004年に起こった栃木5億円強奪事件や、2011年の立川6億円強奪事件がこれを上回るも、金融機関を標的とした現金強奪事件としては依然として本事件が最高額である。
【捕まらない犯人】
行員は男2人の特徴を証言した。逃走に使用した軽ワゴン車も発見されたが、これは盗難車だと判明した。しかしその後の捜査は難航。本事件のおよそ半年後に発生した阪神淡路大震災も影響したと考えられる。
1999年になり、ようやく男2人の身元を特定。換金を依頼した札が、強奪された札の番号と一致したことが決め手となった。男のうち一人は元・パチンコ店店員のBである。Bは知人に犯行を打ち明けていたという。実はBは1997年時点で捜査線上に浮かんでおり、参考人聴取を行っていたが、その直後に自殺した。止む無くBは被疑者死亡のまま書類送検される。もう一人は元・暴力団組員のMである。Mは指名手配された。
しかしMの行方はなかなか掴めなかった。期間中に韓国や香港など計9回海外渡航していたことが明らかになり、刑事訴訟法255条1項に基づき公訴時効は約8ヶ月延長されたが、結局2002年4月1日に公訴時効が成立。強盗罪の当時の公訴時効は7年だった。2010年の刑事訴訟法改正により現在は10年となっている。
【まさかの結末】
その後、Mは意外な形で姿を現した。2007年2月9日午前9時40分頃、愛知県名古屋市の愛知信用金庫西大須支店において強盗傷害容疑で逮捕されたのだ。2007年の事件も94年の事件とそっくりで、駐車場で信金職員が車からジュラルミンケースを下ろそうとしたところ、男Mが拳銃のようなものを突きつけて脅したというものである。
しかし今度は現金強奪に失敗。職員に取り押さえられ、敢え無く警察に逮捕されたのだった。逮捕された後、Mは神戸の事件の犯人であることを自ら語り始めたという。因みに、ジュラルミンケースに現金は入っておらず、CD-ROMや書類だけが入っていたとのこと。
兵庫県警内では、糖尿病を患っているMは既に病死したという見方もあったという。病気で弱っていたために愛知信用金庫の事件では簡単に取り押さえられたとする分析もある。札番号を押さえられ金を自由に使うことはできず、所持金も少ない中で今回の犯行に及んだようだ。Mは福徳銀行事件の逃亡中、偽造パスポートを用いたり、整形したり、偽名を使っていたことが判明している。
愛知信用金庫の事件では、名古屋地裁でMに対して懲役8年の判決が下された。しかし福徳銀行の事件は既に時効が完成しており何らの言及もされることはなかった。
【余談】
ある書籍において、自殺したBはグリコ・森永事件に関与していたとする推理がなされているが、真偽の程は不明。
【出典】
朝日新聞1994年8月5日「輸送車の5億4100万円強奪 短銃持つ2人組 福徳銀行神戸支店」
朝日新聞1994年8月5日「三菱銀行上回る被害額 神戸の福徳銀行現金強奪事件/大阪」
毎日新聞1994年8月5日「現金5億4100万円を強奪 2人組、銀行の現金輸送車を狙うーー神戸・三宮」
朝日新聞1997年12月4日「参考人聴取の男性、翌日自殺 関与否定 神戸・5億円強奪/大阪」
毎日新聞1997年12月4日「福徳銀行神戸支店5億円強奪事件 聴取の男性、翌日自殺 資金洗浄の男性と交際」
読売新聞1997年12月4日「福徳銀行5億円強奪 兵庫県警の聴取の翌日、参考人自殺」
朝日新聞1997年12月21日「ゴルフ練習場強盗に関与か 5億円強奪で聴取後自殺の男性/大阪」
朝日新聞1998年8月3日「かぎ握る元暴力団員? 福徳銀行神戸支店5億円強奪事件/兵庫」
朝日新聞1999年10月14日「元組員を指名手配、自殺の店員書類送検 福徳銀行5億円強奪/大阪」
毎日新聞1999年10月14日「旧福徳銀行5億円強奪事件 容疑で元会社員を手配 自殺男性も書類送検ーー兵庫県警」
朝日新聞2001年8月1日「国外逃亡8ヵ月、公訴時効伸びる 旧福徳銀強奪の容疑者/大阪」
毎日新聞2001年8月1日「神戸・福徳銀行5億円強奪事件 公訴時効8ヵ月延長ーー兵庫県警」
朝日新聞2002年4月1日「旧福徳銀の5億円強奪事件が時効成立/大阪」
毎日新聞2002年4月1日「旧福徳銀行神戸支店5億円強奪事件の公訴時効が成立 兵庫県警」
読売新聞2002年4月1日「旧福徳銀行5億円強奪、時効成立 "10の顔持つ男"どこへ」
毎日新聞2007年2月10日「旧福徳銀事件:5億円強奪の男逮捕 手配のM容疑者、整形・偽名で逃亡13年」
読売新聞2007年2月10日「旧福徳銀行5億円強奪時効 10の顔を持つ男逮捕 名古屋の信金強盗、現行犯」
読売新聞2007年2月10日「名古屋の信金強盗 M容疑者、5億円強盗と手口酷似」
毎日新聞2007年3月2日「旧福徳銀事件:愛知信金強盗容疑の男「5億円もやった」「手配知っていた」」
読売新聞2007年5月18 「旧福徳銀行事件で手配男 信金強盗未遂で懲役8年判決/名古屋地裁」