1989年3月7日、松岡伸矢くん（4歳）が母方の実家がある徳島県で行方不明となった。家の玄関近くで父親が目を離したおよそ40秒ほどのうちに姿を消したという。2020年現在も伸矢くんは見つかっていない。
【一瞬のうちに】
松岡さん一家は茨城県牛久市在住だった。一家は父親 正伸さん、母親 圭子さん、長女、長男 伸矢くん（当時4歳）、次男（当時2歳）の5人。1989年3月5日に圭子さんの母（伸矢くんの祖母）が亡くなったため、6日に一家揃って徳島県小松島市での葬儀に参列した。そして葬儀が終わったあとは美馬郡貞光町平石（現在はつるぎ町貞光平石）にある親戚の家に泊まった。
3月7日の朝8時頃、正伸さんは3人の子どもと従兄弟の子どもを連れて近所に散歩に出かけた。散歩は10分ほどだった。正伸さんによれば、散歩を終えて戻ってきた玄関先（玄関から10メートルほど）まで伸矢くんは後ろについてきていたという。
しかし、正伸さんが家に入って抱いていた次男を圭子さんに預け、再び玄関先に戻ってみると、伸矢くんは既に姿を消していた。玄関先に着いて、家に入って次男を預けて、玄関先まで戻る、これがおよそ40秒ほどだったとされる。この秒数についてはストップウォッチを使っていたわけでもないし、正確なところは不明。事件を取り上げたテレビ番組では20秒ほどとしたものもある。いずれにせよ1分にも満たないような、ごくわずかな時間というのは間違いないのだろう。
一家と親戚はすぐに周辺を探したものの見つからない。地元の消防団も捜索に加わった。当日午前10時には警察にも通報している。親戚宅は山間部の林道の終点付近にあり、すぐ近くが山ということもあって、消防や警察は山間部を中心に捜索した。しかし3ヶ月かけても伸也くんを見つけることはできなかった。
【閉ざされた土地で】
この親戚宅のロケーションというのが独特である。山間部の林道の終点付近ということで外部の人間が通りがかるようなことはほとんど無い。googleマップ等を使うとよく分かる。また、住宅の玄関先までは山道斜面に延びる私道を進んで行かなくてはならない。人拐いだとしてもそこまで侵入してくるのはリスクが高すぎるのではないか。
当日の伸矢くんはもう少し散歩を続けたい風だったという。父親ともう少し遊びたくて自ら道を引き返し、そこで何かが起こったということは考えられる。例えば交通事故に遭ったとか。しかし警察も同じ考えがあったのだろうが、周辺に交通事故の痕跡などは無かったとのこと。周辺の畑で作業をしていた人も不審な車などは見かけなかったという。
では、不審者が車を使わずに徒歩でやって来たとしたらどうか。周辺に民家は無いのだから目撃されるリスクは低い。ただし、伸矢くんが当日親戚宅に泊まっていたことは外部に知られていない。従って、最初から伸矢くんを狙って拐いにきたというのは無理筋だ。それと同時に、伸矢くんが親戚宅に泊まりに来ていることは周囲に知られていなかったのだから、不審者が伸矢くんを連れて歩いていても周囲の民家は特に気にしなかったかもしれない。
【怪電話】
身代金目的の誘拐ということも考えられたためか、3月8日に親戚宅の電話にテープレコーダーが取り付けられた。そして一家が牛久市へ帰る前日の3月16日に一本の怪電話がかかってきた。
「奥さんはいますか？」と徳島弁の女性の声だった。正伸さんは圭子さんに電話を代わる。電話の女性は「ナカハラマリコの母親」を名乗り、「成蹊幼稚園の父兄が見舞金を集めた、どちらに送ればよいか、もう帰ってくるのか」といった内容を話した。成蹊幼稚園とは長女（伸矢くんの姉）と伸矢くんが通う茨城県の幼稚園である。
圭子さんは明日帰る予定だということを伝えて電話を切った。その後は連絡無し。しかし、後で幼稚園に問い合わせたところ見舞金を集めたという事実は無く、またナカハラマリコなる園児も在籍していないことが分かった
電話の女性は徳島弁であったという。女性が徳島在住の人間だとすれば、伸矢くんたちが通う茨城の幼稚園の名前を知っているのは可怪しい。茨城在住の人間であれば、伸矢くんたちの泊まっている親戚宅の電話番号を知っているはずはない。一家の事情を知る人間からの電話としか思えない。例えば、6日の葬儀に参列した人間、あるいはその周辺人物ということが考えられる。いずれにせよ、この怪電話に関してそれ以上の進展は無かった。
【息子を探して】
正伸さんは伸矢くんの捜索に集中するため、会社を辞めて自営業へ転職した。テレビ番組によく出演し、情報提供を呼びかけた。
伸矢くんらしき少年を見かけたという情報はいくつも寄せられている。ここで列挙はしないが、ほとんどの目撃情報は、伸矢くんらしき少年と父親には見えない男性が一緒にいたというものである。正伸さんや圭子さんは実際に伸矢くんらしき少年が目撃されたという現場まで足を運んだが、伸也くんの行方は今なお掴めていない。
2018年1月、とあるテレビ番組に記憶喪失の男性が登場した。曰く「4歳頃から17年間、男に軟禁されていた」とか。番組の視聴者からは、この男性が松岡伸矢くんではないかとの声が多く寄せられた。しかし、最終的にDNA鑑定も行った結果、番組に出演した記憶喪失の男性は松岡伸矢くんではないことが確認された。経緯については正伸さんが自身のSNSで報告しているので疑いがない。また、正伸さんは親としての直感で、当初からこの男性が伸矢くんではないと思っていたという。家族の記憶の中の伸矢くんは4歳のころのままだが、それでも実の親であれば分かるものがあるのだろう。
一家は2020年現在も伸矢くんを探し続けている。
【一瞬のうちに】
松岡さん一家は茨城県牛久市在住だった。一家は父親 正伸さん、母親 圭子さん、長女、長男 伸矢くん（当時4歳）、次男（当時2歳）の5人。1989年3月5日に圭子さんの母（伸矢くんの祖母）が亡くなったため、6日に一家揃って徳島県小松島市での葬儀に参列した。そして葬儀が終わったあとは美馬郡貞光町平石（現在はつるぎ町貞光平石）にある親戚の家に泊まった。
3月7日の朝8時頃、正伸さんは3人の子どもと従兄弟の子どもを連れて近所に散歩に出かけた。散歩は10分ほどだった。正伸さんによれば、散歩を終えて戻ってきた玄関先（玄関から10メートルほど）まで伸矢くんは後ろについてきていたという。
しかし、正伸さんが家に入って抱いていた次男を圭子さんに預け、再び玄関先に戻ってみると、伸矢くんは既に姿を消していた。玄関先に着いて、家に入って次男を預けて、玄関先まで戻る、これがおよそ40秒ほどだったとされる。この秒数についてはストップウォッチを使っていたわけでもないし、正確なところは不明。事件を取り上げたテレビ番組では20秒ほどとしたものもある。いずれにせよ1分にも満たないような、ごくわずかな時間というのは間違いないのだろう。
一家と親戚はすぐに周辺を探したものの見つからない。地元の消防団も捜索に加わった。当日午前10時には警察にも通報している。親戚宅は山間部の林道の終点付近にあり、すぐ近くが山ということもあって、消防や警察は山間部を中心に捜索した。しかし3ヶ月かけても伸也くんを見つけることはできなかった。
【閉ざされた土地で】
この親戚宅のロケーションというのが独特である。山間部の林道の終点付近ということで外部の人間が通りがかるようなことはほとんど無い。googleマップ等を使うとよく分かる。また、住宅の玄関先までは山道斜面に延びる私道を進んで行かなくてはならない。人拐いだとしてもそこまで侵入してくるのはリスクが高すぎるのではないか。
当日の伸矢くんはもう少し散歩を続けたい風だったという。父親ともう少し遊びたくて自ら道を引き返し、そこで何かが起こったということは考えられる。例えば交通事故に遭ったとか。しかし警察も同じ考えがあったのだろうが、周辺に交通事故の痕跡などは無かったとのこと。周辺の畑で作業をしていた人も不審な車などは見かけなかったという。
では、不審者が車を使わずに徒歩でやって来たとしたらどうか。周辺に民家は無いのだから目撃されるリスクは低い。ただし、伸矢くんが当日親戚宅に泊まっていたことは外部に知られていない。従って、最初から伸矢くんを狙って拐いにきたというのは無理筋だ。それと同時に、伸矢くんが親戚宅に泊まりに来ていることは周囲に知られていなかったのだから、不審者が伸矢くんを連れて歩いていても周囲の民家は特に気にしなかったかもしれない。
【怪電話】
身代金目的の誘拐ということも考えられたためか、3月8日に親戚宅の電話にテープレコーダーが取り付けられた。そして一家が牛久市へ帰る前日の3月16日に一本の怪電話がかかってきた。
「奥さんはいますか？」と徳島弁の女性の声だった。正伸さんは圭子さんに電話を代わる。電話の女性は「ナカハラマリコの母親」を名乗り、「成蹊幼稚園の父兄が見舞金を集めた、どちらに送ればよいか、もう帰ってくるのか」といった内容を話した。成蹊幼稚園とは長女（伸矢くんの姉）と伸矢くんが通う茨城県の幼稚園である。
圭子さんは明日帰る予定だということを伝えて電話を切った。その後は連絡無し。しかし、後で幼稚園に問い合わせたところ見舞金を集めたという事実は無く、またナカハラマリコなる園児も在籍していないことが分かった
電話の女性は徳島弁であったという。女性が徳島在住の人間だとすれば、伸矢くんたちが通う茨城の幼稚園の名前を知っているのは可怪しい。茨城在住の人間であれば、伸矢くんたちの泊まっている親戚宅の電話番号を知っているはずはない。一家の事情を知る人間からの電話としか思えない。例えば、6日の葬儀に参列した人間、あるいはその周辺人物ということが考えられる。いずれにせよ、この怪電話に関してそれ以上の進展は無かった。
【息子を探して】
正伸さんは伸矢くんの捜索に集中するため、会社を辞めて自営業へ転職した。テレビ番組によく出演し、情報提供を呼びかけた。
伸矢くんらしき少年を見かけたという情報はいくつも寄せられている。ここで列挙はしないが、ほとんどの目撃情報は、伸矢くんらしき少年と父親には見えない男性が一緒にいたというものである。正伸さんや圭子さんは実際に伸矢くんらしき少年が目撃されたという現場まで足を運んだが、伸也くんの行方は今なお掴めていない。
2018年1月、とあるテレビ番組に記憶喪失の男性が登場した。曰く「4歳頃から17年間、男に軟禁されていた」とか。番組の視聴者からは、この男性が松岡伸矢くんではないかとの声が多く寄せられた。しかし、最終的にDNA鑑定も行った結果、番組に出演した記憶喪失の男性は松岡伸矢くんではないことが確認された。経緯については正伸さんが自身のSNSで報告しているので疑いがない。また、正伸さんは親としての直感で、当初からこの男性が伸矢くんではないと思っていたという。家族の記憶の中の伸矢くんは4歳のころのままだが、それでも実の親であれば分かるものがあるのだろう。
一家は2020年現在も伸矢くんを探し続けている。
