2004年4月13日午前1時20分頃、愛媛県大洲市長浜町の民家より出火。焼け跡から、この家に一人で暮らしている会社員の女性 鎌田 美千子さん(当時52歳)の遺体が見つかった。

 現場の状況などから警察は放火殺人事件と断定して捜査を開始する。しかし目撃証言に乏しく、2020年現在も犯人を特定できないまま未解決事件となっている。

【深夜に不審者が侵入】
 鎌田さんは出火の約30分前に、同じ町内に住む長女らに「下の階に誰かがいる気配がする」などと電話をかけていた。鎌田さんは2階を寝室にしていて、電話はそこからかけたとみられる。約15分後に長女らは110番通報をし、ほぼ同時に鎌田さん自身も110番通報していた。鎌田さんは長女らへの電話と同様にして「下の階に誰かがいる」旨を約10分ほど警察に説明していたが、「煙が上がってきた、怖い、早くパトカーを来させて」と叫んだところで電話は切れてしまった。

 1時半過ぎ、長女らが鎌田さん宅に駆けつける。住宅2階からは鎌田さんの「熱い」という声が聞こえた。続いて到着した消防団の呼びかけに、鎌田さんは「早く助けて」と答えたものの、あまりに火の回りが早く、救出に入ることはできなかった。結局、消防車7台により消火が試みられたが、木造モルタル2階建て約150平方メートルの民家は全焼し、鎌田さんは亡くなった。

【捜査】
 現場の状況から、犯人は灯油を撒いて放火したようだ。住宅1階に撒かれた痕跡があった。火の回りの早さからして、かなりの量が撒かれたものと思われる。また、侵入経路は台所の窓と特定された模様。事件当時近所で侵入盗が多発しており、鎌田さん宅1階にも物色されたような形跡がみられたことから、警察は関連性を調査していたが、手口の違いから関連性が薄いと判断されている。どうやら強盗目的の可能性は低そうである。

 それでは怨恨による犯行かというと、鎌田さんの周辺で人間関係のトラブルは確認されなかった。しかし、家族の証言によれば、鎌田さんは「最近、変な人に付きまとわれて困っている」などと語っていたという。鎌田さん自身に非はなくとも、何らかのきっかけで一方的な恨みを買ってしまったのかもしれない。

 現場に駆けつけた長女らは、出火当時に鎌田さん宅から北にある沖浦公園方面に走り去る「男性」の姿を目撃したとされる。だが、深夜だったこともあり、その身体的特徴はハッキリしていない。警察は唯一の手がかりとなり得るこの男の行方を追っているが、未だ何者なのか不明のままである。

 2020年現在も、愛媛県警大洲署は16人体制の特別捜査本部を置き、SNS等も活用しつつ捜査を継続。遺族も県警と協力して、駅前でチラシを配るなどして、犯人の行方を追っている。

【リンク】
 愛媛県警による情報提供呼びかけは以下。
 https://www.police.pref.ehime.jp/section/tehai001.pdf

【出典】
 産経新聞2004年4月13日「女性宅に放火、殺害 愛媛」
 毎日新聞2004年4月13日「火災:愛媛で住宅全焼、女性の遺体発見ーー放火殺人で捜査」
 読売新聞2004年4月13日「放火、女性殺される 愛媛の民家 「不審者いる、助けて」110番」

 朝日新聞2004年4月14日「「家に誰かが」出火直前に電話 焼死は放火殺人か 愛媛・長浜町」
 朝日新聞2004年4月14日「まじめな人が、なぜ?長浜の民家全焼、放火殺人事件 愛媛」
 読売新聞2004年4月14日「長浜・放火殺人 海辺の町悲しみ包む 火の回り瞬く間 助け呼ぶ声むなし=愛媛」
 読売新聞2004年4月18日「愛媛の放火殺人 広範囲に灯油撒く 1階に物色の跡」
 読売新聞2004年10月13日「長浜・放火殺人から半年 真相いまだ闇 目撃情報、証拠少なく=愛媛」