2008年3月17日(月曜日)午後19時頃、東京都練馬区中村北のアパートの一室で、この部屋に住む古谷祐将さん(ふるたに・ゆうしょう、24歳)が窒息死しているのが発見された。

 古谷さんは都内のインターネットサービス会社勤務。勤務態度は真面目で、この日初めて無断欠勤したのを心配した上司がアパートを訪ねたことで事件は発覚した。警察は殺人事件として捜査を開始するが、2022年現在も犯人は特定されていない。捜査継続中。

【遺体】
 遺体の首が内出血しており、タオルのような幅広の柔らかい布などで絞められたとみられる。死亡推定時刻は16日の午後22時頃。同じアパートの住人がこの時間帯に「ドスン、バタン」という物音を聞いている。

【襲撃、そして逃走】 
 古谷さんの住むアパート1階の部屋のベランダには不審な足跡が残され、柵を乗り越えたような跡もあった。犯人はベランダから室内に侵入した可能性が高い。遺体の上半身はジャージで、下半身は下着姿だった。古谷さんは一人部屋でくつろいでいるところを突然襲撃されたと伺える。

 事件発覚時に玄関のカギは開いたままだった。これは古谷さんが無施錠だったのではなく、犯人がここから逃走していったということだろう。事実、玄関からも不審な足跡が発見されたと伝えられている。

 また、古谷さんの所有する赤い自転車が、現場から北東に300メートルほど離れた「千川通り」で無施錠のまま放置されていた。発見されたのは事件発覚後の3月18日。犯人が逃走に使った可能性がある。なお、古谷さんは16日の昼過ぎに近所のコンビニで公共料金を支払ったことが防犯カメラ映像から判明しているが、同店店員によればこの時も赤い自転車に乗っていたという。

【犯行目的と犯人像】
 古谷さんの財布は、17日午後に都内の交番に拾得物として届けられている。カード類は残されていたが現金は入っていなかった。犯人が現場から強奪し、現金を抜き取った上で捨てたものと思われる。すなわち強盗殺人。

 室内に残された古谷さんの携帯電話には、友人と電話やメールをした履歴が残っており、死亡推定時刻前後にもメールの送信記録があった。古谷さんが生前に送った可能性もあるが、犯人による古谷さん生存の偽装工作という指摘もある。

 アパート1階でベランダが無施錠であれば確かに侵入自体は容易だろう。とはいえ、仮に不意打ちができたとしても、見ず知らずの成人男性を相手にするのはリスクが高いと言わざるを得ない。刃物などを用意していないのであれば尚更である。その上、上記の生存工作が事実だったとして、知らない人間の会話に割って入ってそれを行うのは逆に不自然に思われないだろうか。

 したがって、犯人と古谷さんは顔見知りであったか、あるいは犯人が古谷さんのことを一方的に知っていたと考えられる。だが、交友関係を調査しても有力な情報は浮かんできていない。夜間の犯行のため第三者による目撃証言も皆無。結局のところ、事件発覚当初から現在に至るまで捜査に進展はみられないままだ。

【リンク】
 警視庁による情報提供呼びかけページは以下。
 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/jiken_jiko/ichiran/ichiran_11-20/nerima.html

【出典】
 朝日新聞2008年3月19日「アパートに男性絞殺体 現金・財布なくなる 東京・練馬」
 産経新聞2008年3月19日「アパートで強殺 男性、首絞められた跡 練馬」
 東京新聞2008年3月19日「会社員 強殺される 練馬のアパート」
 東京新聞2008年3月19日「自転車を発見 逃走に使う? 練馬の会社員強殺」
 毎日新聞2008年3月19日「強盗殺人:24歳、アパート自室で殺されるー東京・練馬」
 読売新聞2008年3月19日「アパートに男性遺体 首に絞められた跡/東京・練馬」
 産経新聞2008年3月20日「メールで生存偽装か 練馬の強殺 犯行前後に送信」
 東京新聞2008年3月20日「会社員の財布 路上で発見 練馬の強殺、現金なし」