2001年5月1日午前8時5分頃、大阪府茨木市天王2丁目、阪急共栄ストアー南茨木店前路上にて、同スーパー店員の矢野愼さん(やの・まこと、33歳)が血まみれで倒れているのを同僚が発見した。矢野さんは直ちに病院に運ばれるも死亡が確認。左胸に刃物による深い傷を負っていた。
【開店前のスーパーで】
阪急共栄ストアー南茨城店は、阪急南茨木駅に隣接する「南茨木阪急ビル」の1階と2階に入居する。また、約50メートル離れたビルにはスーパーを経営する阪急共栄物産の事務所がある。
矢野さんはスーパーの食料品売り場の責任者で、普段は車で午前7時頃に出勤していた。事件があった日も同様にして出勤したが、午前8時前後に店内で不審な男に脅迫されている様子が複数の同僚により目撃される。
証言によれば、不審な男が7時50分頃にスーパー1階の商品搬入口から店内に入って行き、その5分後には1階から2階への階段の踊り場で矢野さんを壁に押し付けるようにして凄んでいたという。そこに同僚が通りがかると男の方から「おはようございます」と挨拶をしてきた。同僚は「出入りしている外部業者かな」と考え、何かしらトラブルが発生している様子は感じ取ったものの、それ以上追求することはせず通り過ぎた。
その後、矢野さんは男に無理やり連れ出され、阪急共栄物産の事務所へと向かった模様。ビル内で店長が2人とすれ違っている。しかし最後は路上で男が矢野さんを一方的に怒鳴りつけ、揉み合いになったかと思うと突然ナイフで刺し、南茨木駅北側の駐輪場方面へ逃走した。駅前ということもあって複数の目撃者がいたが、府警は行方を掴むことはできなかった。男の行方は2022年現在も不明。身元も特定されていない。
【狙われたのは】
何故、矢野さんは不審な男に狙われたのだろうか。プライベートでは特にトラブルは確認されず、身につけていた財布に入っていた6万円も手付かずだった。しかし、矢野さんはスーパーの金庫を管理する立場で、府警は何らかの経緯でそれを知った男が金庫を無理やり開けさせようとしたと見ている。
また、現場にはスーパーが日頃利用していた夜間金庫のカギが落ちていた。このカギは普段は阪急共栄物産の事務所で保管しているものだった。この件に関する府警の見立ては以下である。すなわち、スーパー2階にある売上金を保管する金庫の鍵は矢野さん含め3人が所持しており、実際に矢野さんのズボンのポケットに入っていた。だが、金庫を守ろうとした矢野さんは、時間を稼ぐべく「金庫とカギは別の場所にある」と男に言う。そうして2人は阪急共栄物産に向かって夜間金庫の方のカギを持ち出すこととなり、矢野さんは路上で隙を突いて逃げ出すことを考えていたが叶わず、とうとう痺れを切らした男によって刺殺されてしまった…ということだ。
なお、スーパー2階の方の金庫には、ゴールデンウィークということもあり、普段より多い数百万円が入っていたという。
【捜査】
矢野さんが左胸に負った傷は長さ1.5センチ、深さ3センチ。しかし凶器となった刃物は見つかっていない。犯人が持ち去ったものと思われる。
犯人の人相は後掲の府警ホームページを参照。複数の似顔絵が挙げられているが、犯人が複数いるということではなく、目撃者によって犯人の印象が少しずつ異なるためである。とはいえ、身長約165センチ、白髪混じりのオールバック、目がぱっちりとして大きい、年齢は30〜50歳位(事件発生当時の報道は40歳前後としていた)、紺か黒のジャンパーと黒のズボン、といった特徴は一致している。また、スーパー店内で目撃された際は白いマスクをしていたとされる。
迷うことなく商品搬入口から店内へ入って行ったことや、矢野さんが金庫の管理者であることをあらかじめ知っていたような様子から、男はスーパーの内部事情に詳しかったと伺える。矢野さんと顔見知りであったかは不明。毎日新聞の報道によれば、犯人に酷似した中年の男が、事件の1ヶ月ほど前からスーパー搬入口付近で2度ほど目撃されていたという。強盗を企んだ下調べの中で矢野さんのことを知ったのだろうか。
【懸賞金】
2007年5月1日、捜査特別報奨金(公費懸賞金)制度がスタート。本事件は制度開始時に指定された5事件のうち1つ。制度開始後に情報は数十件寄せられたというが、有力なものはなかった。指定期限は原則として1年のため、2022年現在は既に対象から外れている。2022年2月現在は遺族による私的謝礼金200万円がかけられている。
【リンク】
大阪府警による情報提供呼びかけページは以下。私的謝礼金の情報も掲載されている。
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/jiken/jyoho/1/3553.html
【その他の事件】
スーパーマーケットが狙われた未解決事件
・広島市佐伯区スーパー強盗殺人事件(2000年9月)
・八王子スーパーナンペイ強盗殺人事件(1995年7月)
捜査特別報奨金制度の開始時に対象となった事件
・名古屋市中川区老夫婦強盗殺人事件(2006年6月)
・大阪堺市母娘殺傷事件(2006年1月)
・北海道石狩市会社員強盗殺人事件(2005年1月)
・千葉市高校教諭強盗殺人事件(1997年2月)
【出典】
朝日新聞2001年5月1日「スーパー店員刺殺される 直前、店で男と口論 大阪・茨木」
毎日新聞2001年5月1日「大阪・阪急南茨木駅前で店員刺され死亡 スーパー開店準備中 強盗か、男逃走」
読売新聞2001年5月1日「スーパー店員刺殺される 開店前に男とトラブル 大阪・阪急南茨木駅前の歩道」
朝日新聞2001年5月2日「男、北方へ逃走か 似顔絵公開 大阪のスーパー店員刺殺」
朝日新聞2001年5月2日「金庫狙った犯行か 大阪・茨木のスーパー店員刺殺事件」
毎日新聞2001年5月2日「大阪・茨木市のスーパー店員刺殺事件 10分間小競り合い 金庫開けるよう要求か」
毎日新聞2001年5月2日「大阪・茨木の店員刺殺 犯人に似た中年男、1カ月前から目撃」
朝日新聞2001年5月3日「男、直前に被害者怒鳴る 大阪のスーパー店員刺殺事件」
毎日新聞2001年5月3日「大阪・茨木市のスーパー店員刺殺事件 金庫は2種類 犯人、聞き出し図る?」
朝日新聞2001年5月4日「現場に夜間金庫のかぎ 大阪・茨木の殺人」
朝日新聞2001年5月8日「犯人の似顔絵、さらに3種類 茨木のスーパー店員刺殺事件」
読売新聞2001年5月8日「茨木のスーパー店員刺殺事件 新たに3種類の似顔絵を公開」
朝日新聞2003年5月1日「有力情報に200万円 茨木・スーパー店員刺殺から2年」
毎日新聞2003年5月1日「大阪・茨木市のスーパー店員強殺事件 有力情報に遺族が総額200万円の謝礼提供」
読売新聞2003年5月1日「茨木のスーパー店員刺殺 遺族が情報提供に懸賞200万円 発生から2年」
朝日新聞2007年5月1日「遺族「事件思い出して」大阪でも糸口期待 報奨金制度」
毎日新聞2007年5月1日「警察庁:有力情報に最大300万円 初の公費懸賞金、5件指定ー大阪の強殺など」
読売新聞2007年5月1日「公費懸賞金制度スタート スーパー強殺と母娘殺傷、遺族切実「情報を」」
【開店前のスーパーで】
阪急共栄ストアー南茨城店は、阪急南茨木駅に隣接する「南茨木阪急ビル」の1階と2階に入居する。また、約50メートル離れたビルにはスーパーを経営する阪急共栄物産の事務所がある。
矢野さんはスーパーの食料品売り場の責任者で、普段は車で午前7時頃に出勤していた。事件があった日も同様にして出勤したが、午前8時前後に店内で不審な男に脅迫されている様子が複数の同僚により目撃される。
証言によれば、不審な男が7時50分頃にスーパー1階の商品搬入口から店内に入って行き、その5分後には1階から2階への階段の踊り場で矢野さんを壁に押し付けるようにして凄んでいたという。そこに同僚が通りがかると男の方から「おはようございます」と挨拶をしてきた。同僚は「出入りしている外部業者かな」と考え、何かしらトラブルが発生している様子は感じ取ったものの、それ以上追求することはせず通り過ぎた。
その後、矢野さんは男に無理やり連れ出され、阪急共栄物産の事務所へと向かった模様。ビル内で店長が2人とすれ違っている。しかし最後は路上で男が矢野さんを一方的に怒鳴りつけ、揉み合いになったかと思うと突然ナイフで刺し、南茨木駅北側の駐輪場方面へ逃走した。駅前ということもあって複数の目撃者がいたが、府警は行方を掴むことはできなかった。男の行方は2022年現在も不明。身元も特定されていない。
【狙われたのは】
何故、矢野さんは不審な男に狙われたのだろうか。プライベートでは特にトラブルは確認されず、身につけていた財布に入っていた6万円も手付かずだった。しかし、矢野さんはスーパーの金庫を管理する立場で、府警は何らかの経緯でそれを知った男が金庫を無理やり開けさせようとしたと見ている。
また、現場にはスーパーが日頃利用していた夜間金庫のカギが落ちていた。このカギは普段は阪急共栄物産の事務所で保管しているものだった。この件に関する府警の見立ては以下である。すなわち、スーパー2階にある売上金を保管する金庫の鍵は矢野さん含め3人が所持しており、実際に矢野さんのズボンのポケットに入っていた。だが、金庫を守ろうとした矢野さんは、時間を稼ぐべく「金庫とカギは別の場所にある」と男に言う。そうして2人は阪急共栄物産に向かって夜間金庫の方のカギを持ち出すこととなり、矢野さんは路上で隙を突いて逃げ出すことを考えていたが叶わず、とうとう痺れを切らした男によって刺殺されてしまった…ということだ。
なお、スーパー2階の方の金庫には、ゴールデンウィークということもあり、普段より多い数百万円が入っていたという。
【捜査】
矢野さんが左胸に負った傷は長さ1.5センチ、深さ3センチ。しかし凶器となった刃物は見つかっていない。犯人が持ち去ったものと思われる。
犯人の人相は後掲の府警ホームページを参照。複数の似顔絵が挙げられているが、犯人が複数いるということではなく、目撃者によって犯人の印象が少しずつ異なるためである。とはいえ、身長約165センチ、白髪混じりのオールバック、目がぱっちりとして大きい、年齢は30〜50歳位(事件発生当時の報道は40歳前後としていた)、紺か黒のジャンパーと黒のズボン、といった特徴は一致している。また、スーパー店内で目撃された際は白いマスクをしていたとされる。
迷うことなく商品搬入口から店内へ入って行ったことや、矢野さんが金庫の管理者であることをあらかじめ知っていたような様子から、男はスーパーの内部事情に詳しかったと伺える。矢野さんと顔見知りであったかは不明。毎日新聞の報道によれば、犯人に酷似した中年の男が、事件の1ヶ月ほど前からスーパー搬入口付近で2度ほど目撃されていたという。強盗を企んだ下調べの中で矢野さんのことを知ったのだろうか。
【懸賞金】
2007年5月1日、捜査特別報奨金(公費懸賞金)制度がスタート。本事件は制度開始時に指定された5事件のうち1つ。制度開始後に情報は数十件寄せられたというが、有力なものはなかった。指定期限は原則として1年のため、2022年現在は既に対象から外れている。2022年2月現在は遺族による私的謝礼金200万円がかけられている。
【リンク】
大阪府警による情報提供呼びかけページは以下。私的謝礼金の情報も掲載されている。
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/jiken/jyoho/1/3553.html
【その他の事件】
スーパーマーケットが狙われた未解決事件
・広島市佐伯区スーパー強盗殺人事件(2000年9月)
・八王子スーパーナンペイ強盗殺人事件(1995年7月)
捜査特別報奨金制度の開始時に対象となった事件
・名古屋市中川区老夫婦強盗殺人事件(2006年6月)
・大阪堺市母娘殺傷事件(2006年1月)
・北海道石狩市会社員強盗殺人事件(2005年1月)
・千葉市高校教諭強盗殺人事件(1997年2月)
【出典】
朝日新聞2001年5月1日「スーパー店員刺殺される 直前、店で男と口論 大阪・茨木」
毎日新聞2001年5月1日「大阪・阪急南茨木駅前で店員刺され死亡 スーパー開店準備中 強盗か、男逃走」
読売新聞2001年5月1日「スーパー店員刺殺される 開店前に男とトラブル 大阪・阪急南茨木駅前の歩道」
朝日新聞2001年5月2日「男、北方へ逃走か 似顔絵公開 大阪のスーパー店員刺殺」
朝日新聞2001年5月2日「金庫狙った犯行か 大阪・茨木のスーパー店員刺殺事件」
毎日新聞2001年5月2日「大阪・茨木市のスーパー店員刺殺事件 10分間小競り合い 金庫開けるよう要求か」
毎日新聞2001年5月2日「大阪・茨木の店員刺殺 犯人に似た中年男、1カ月前から目撃」
朝日新聞2001年5月3日「男、直前に被害者怒鳴る 大阪のスーパー店員刺殺事件」
毎日新聞2001年5月3日「大阪・茨木市のスーパー店員刺殺事件 金庫は2種類 犯人、聞き出し図る?」
朝日新聞2001年5月4日「現場に夜間金庫のかぎ 大阪・茨木の殺人」
朝日新聞2001年5月8日「犯人の似顔絵、さらに3種類 茨木のスーパー店員刺殺事件」
読売新聞2001年5月8日「茨木のスーパー店員刺殺事件 新たに3種類の似顔絵を公開」
朝日新聞2003年5月1日「有力情報に200万円 茨木・スーパー店員刺殺から2年」
毎日新聞2003年5月1日「大阪・茨木市のスーパー店員強殺事件 有力情報に遺族が総額200万円の謝礼提供」
読売新聞2003年5月1日「茨木のスーパー店員刺殺 遺族が情報提供に懸賞200万円 発生から2年」
朝日新聞2007年5月1日「遺族「事件思い出して」大阪でも糸口期待 報奨金制度」
毎日新聞2007年5月1日「警察庁:有力情報に最大300万円 初の公費懸賞金、5件指定ー大阪の強殺など」
読売新聞2007年5月1日「公費懸賞金制度スタート スーパー強殺と母娘殺傷、遺族切実「情報を」」