1990年10月14日、大阪府豊中市にある住宅にて、小学5年生の智片直子ちゃん(ちかた・なおこ、当時11歳)が水の張られた浴槽にぐったりとして倒れているのを帰宅した母親が発見した。
直子ちゃんは何者かに首を絞められた様子で心肺停止状態。内科医をしている父親が懸命な手当を行い、奇跡的に心臓が動き出したものの、結局意識を取り戻すことはなく12月9日に死亡した。
母親は自宅前を走り去る不審な男を目撃したと証言し、警察はこの男が犯人とみて捜査を行うが、身元を特定することはできないまま2005年12月9日に殺人罪の公訴時効が成立してしまった。迷宮入り。
【惨劇は一瞬に】
10月14日、直子ちゃんは同級生の誕生パーティーに参加し、17時2分頃に同級生の家を出て、近くの小学校前で見送ってくれた同級生と別れた。直子ちゃんの自宅まではそこから約500メートル。真っ直ぐ帰れば17時15分〜18分頃には自宅へ辿り着く計算だ。
母親の芳子さんは、車で入院中の実父の見舞いに出かけており、17時20分過ぎに帰ってきたところ、自宅玄関から表に繋がる階段を"若い男"が大急ぎで駆け降りてくるのを運転席から目撃した。
泥棒に入られたと感じた芳子さんは直ちに110番通報する。そして帰宅した夫の英治さんと共に自宅内を点検していたところ、浴室で倒れている直子ちゃんを発見したのである。
以上のタイムラインから、犯行はおよそ5分程度の極めて短時間に行われたものと見做されている。
【不審者】
芳子さんが目撃した"若い男"は、20〜25歳くらいで、身長は約170センチで中肉。鼻の下にひげを生やしているのが特徴的。茶色っぽい長袖シャツに黒っぽいズボン姿で、茶色っぽい小さなバッグも持っていたとされる。芳子さんは「お洒落な雰囲気」と証言している。
同一人物と見られる男は、同日17時前に、智片さん宅の玄関門越しに同家の飼い犬をあやしているのを近所の主婦が目撃している。
【推理】
芳子さんの帰宅時、玄関ドア以外はしっかり施錠されていて、他に侵入された形跡はなかった。つまり犯人は正面堂々と玄関から侵入したということだ。しかも室内に土足痕は無いことから、犯人は玄関で靴を脱いであがったようである。一体どうやって。
合鍵を作っていたのかもしれないが、仮にそうであったとしても、飼い犬がいる前で、日曜の夕方で今にも家族が帰って来ようという時間帯に空き巣に入るのはあまりにリスキーだ。そうなると、犯人は帰宅した直子ちゃんと一緒に家へあがった可能性が出てくる。
例えば、男が門前で犬をあやしていたところに直子ちゃんが一人帰宅し、話してみると「両親はまだ帰ってきていない」などと言うのものだから、彼女を言葉巧みに騙して家に上がり込んだ、といった筋が考えられる。
男の目的は何か。強盗目的の可能性も決してゼロではないが、室内に物色された形跡は全く確認されていないとのこと。怨恨かもしれないが、智片家にトラブルの兆候は確認されていない。やはり変質者による計画性の無い行きずりの犯行だろうか。直子ちゃんへのイタズラ目的で押し入ったが、抵抗されたために殺害したとしたら凶悪極まる犯行である。
【結末】
父親の英治さんの心臓マッサージにより、奇跡的に蘇生した直子ちゃんだが、結局一度も意識を取り戻すことはなく、事件発生から57日目となる12月9日に死亡した。首を強く絞められたために低酸素血症に陥り、いわゆる脳死状態となったのだった。
2005年12月9日、殺人事件としての公訴時効を迎える。目撃証言や現場に残された証拠が乏しく、最初から最後まで捜査に進展はみられなかった。殺人鬼は善良な市民のふりをして今なお何処かで生き続けているのかも知れない。
【出典】
朝日新聞1990年10月15日「小5女児を浴槽に「放置」重体、首絞められた跡 豊中」
朝日新聞1990年10月15日「犯行わずか数分?豊中の女児殺人未遂犯、割り出しに全力」
毎日新聞1990年10月15日「11歳女児、首絞められ重体 両親の留守中に男が侵入ーー大阪の医院」
毎日新聞1990年10月15日「豊中・女児殺人未遂事件 不審男、15分前に侵入 被害宅の事情通か」
読売新聞1990年10月15日「少女、浴槽内で重体 盗みの男、居直り?/大阪・豊中」
朝日新聞1990年10月16日「玄関から侵入 豊中の女児殺人未遂犯」
毎日新聞1990年10月16日「豊中・殺人未遂事件 若い男が直子ちゃんに声かけつきまとうーー今年4月」
毎日新聞1990年10月17日「豊中の殺人未遂事件ーー犯人?の足跡採取、玄関周辺で3個」
朝日新聞1990年10月18日「逃走男の似顔絵を公開 豊中の女児殺人未遂犯」
毎日新聞1990年10月18日「男の似顔絵公開 豊中殺人未遂事件」
朝日新聞1990年10月20日「行きずりの犯行か 豊中市の女児殺人未遂犯行から1週間」
毎日新聞1990年11月14日「豊中院長宅少女殺人未遂事件から1カ月 情報200件、手掛かりなし」
朝日新聞1990年12月10日「小5少女、意識戻らずに死亡 豊中の浴槽放置事件」
毎日新聞1990年12月10日「大阪・豊中医院宅幼女暴行事件 智片直子ちゃん、重体56日で命尽く」
読売新聞1990年12月10日「自宅で襲われ重体の小5女児死ぬ 大阪・豊中署が殺人容疑で捜査」
朝日新聞1991年4月14日「半年、手がかりなし 捜査拡げる 豊中の少女殺人事件」
朝日新聞2005年12月9日「豊中・小5殺害が時効 両親手記「犯人どこ、許せぬ」
産経新聞2005年12月9日「豊中の小5女児殺害 公訴時効が成立 若い男目撃、特定至らず」
毎日新聞2005年12月9日「大阪・豊中の小5殺害:時効成立、両親が手記 再び焦りと絶望が交錯」
読売新聞2005年12月9日「大阪・豊中の女児殺害事件、時効に 両親「犯人どこかで…許せない」
直子ちゃんは何者かに首を絞められた様子で心肺停止状態。内科医をしている父親が懸命な手当を行い、奇跡的に心臓が動き出したものの、結局意識を取り戻すことはなく12月9日に死亡した。
母親は自宅前を走り去る不審な男を目撃したと証言し、警察はこの男が犯人とみて捜査を行うが、身元を特定することはできないまま2005年12月9日に殺人罪の公訴時効が成立してしまった。迷宮入り。
【惨劇は一瞬に】
10月14日、直子ちゃんは同級生の誕生パーティーに参加し、17時2分頃に同級生の家を出て、近くの小学校前で見送ってくれた同級生と別れた。直子ちゃんの自宅まではそこから約500メートル。真っ直ぐ帰れば17時15分〜18分頃には自宅へ辿り着く計算だ。
母親の芳子さんは、車で入院中の実父の見舞いに出かけており、17時20分過ぎに帰ってきたところ、自宅玄関から表に繋がる階段を"若い男"が大急ぎで駆け降りてくるのを運転席から目撃した。
泥棒に入られたと感じた芳子さんは直ちに110番通報する。そして帰宅した夫の英治さんと共に自宅内を点検していたところ、浴室で倒れている直子ちゃんを発見したのである。
以上のタイムラインから、犯行はおよそ5分程度の極めて短時間に行われたものと見做されている。
【不審者】
芳子さんが目撃した"若い男"は、20〜25歳くらいで、身長は約170センチで中肉。鼻の下にひげを生やしているのが特徴的。茶色っぽい長袖シャツに黒っぽいズボン姿で、茶色っぽい小さなバッグも持っていたとされる。芳子さんは「お洒落な雰囲気」と証言している。
同一人物と見られる男は、同日17時前に、智片さん宅の玄関門越しに同家の飼い犬をあやしているのを近所の主婦が目撃している。
【推理】
芳子さんの帰宅時、玄関ドア以外はしっかり施錠されていて、他に侵入された形跡はなかった。つまり犯人は正面堂々と玄関から侵入したということだ。しかも室内に土足痕は無いことから、犯人は玄関で靴を脱いであがったようである。一体どうやって。
合鍵を作っていたのかもしれないが、仮にそうであったとしても、飼い犬がいる前で、日曜の夕方で今にも家族が帰って来ようという時間帯に空き巣に入るのはあまりにリスキーだ。そうなると、犯人は帰宅した直子ちゃんと一緒に家へあがった可能性が出てくる。
例えば、男が門前で犬をあやしていたところに直子ちゃんが一人帰宅し、話してみると「両親はまだ帰ってきていない」などと言うのものだから、彼女を言葉巧みに騙して家に上がり込んだ、といった筋が考えられる。
男の目的は何か。強盗目的の可能性も決してゼロではないが、室内に物色された形跡は全く確認されていないとのこと。怨恨かもしれないが、智片家にトラブルの兆候は確認されていない。やはり変質者による計画性の無い行きずりの犯行だろうか。直子ちゃんへのイタズラ目的で押し入ったが、抵抗されたために殺害したとしたら凶悪極まる犯行である。
【結末】
父親の英治さんの心臓マッサージにより、奇跡的に蘇生した直子ちゃんだが、結局一度も意識を取り戻すことはなく、事件発生から57日目となる12月9日に死亡した。首を強く絞められたために低酸素血症に陥り、いわゆる脳死状態となったのだった。
2005年12月9日、殺人事件としての公訴時効を迎える。目撃証言や現場に残された証拠が乏しく、最初から最後まで捜査に進展はみられなかった。殺人鬼は善良な市民のふりをして今なお何処かで生き続けているのかも知れない。
【出典】
朝日新聞1990年10月15日「小5女児を浴槽に「放置」重体、首絞められた跡 豊中」
朝日新聞1990年10月15日「犯行わずか数分?豊中の女児殺人未遂犯、割り出しに全力」
毎日新聞1990年10月15日「11歳女児、首絞められ重体 両親の留守中に男が侵入ーー大阪の医院」
毎日新聞1990年10月15日「豊中・女児殺人未遂事件 不審男、15分前に侵入 被害宅の事情通か」
読売新聞1990年10月15日「少女、浴槽内で重体 盗みの男、居直り?/大阪・豊中」
朝日新聞1990年10月16日「玄関から侵入 豊中の女児殺人未遂犯」
毎日新聞1990年10月16日「豊中・殺人未遂事件 若い男が直子ちゃんに声かけつきまとうーー今年4月」
毎日新聞1990年10月17日「豊中の殺人未遂事件ーー犯人?の足跡採取、玄関周辺で3個」
朝日新聞1990年10月18日「逃走男の似顔絵を公開 豊中の女児殺人未遂犯」
毎日新聞1990年10月18日「男の似顔絵公開 豊中殺人未遂事件」
朝日新聞1990年10月20日「行きずりの犯行か 豊中市の女児殺人未遂犯行から1週間」
毎日新聞1990年11月14日「豊中院長宅少女殺人未遂事件から1カ月 情報200件、手掛かりなし」
朝日新聞1990年12月10日「小5少女、意識戻らずに死亡 豊中の浴槽放置事件」
毎日新聞1990年12月10日「大阪・豊中医院宅幼女暴行事件 智片直子ちゃん、重体56日で命尽く」
読売新聞1990年12月10日「自宅で襲われ重体の小5女児死ぬ 大阪・豊中署が殺人容疑で捜査」
朝日新聞1991年4月14日「半年、手がかりなし 捜査拡げる 豊中の少女殺人事件」
朝日新聞2005年12月9日「豊中・小5殺害が時効 両親手記「犯人どこ、許せぬ」
産経新聞2005年12月9日「豊中の小5女児殺害 公訴時効が成立 若い男目撃、特定至らず」
毎日新聞2005年12月9日「大阪・豊中の小5殺害:時効成立、両親が手記 再び焦りと絶望が交錯」
読売新聞2005年12月9日「大阪・豊中の女児殺害事件、時効に 両親「犯人どこかで…許せない」