2001年10月27日、茨城県小川町(現・小美玉市)に住む大高保さん(58歳)が自家用車と共に突如失踪した。やがて自家用車は仙台駅近くの駐車場で発見されたが、本人の行方は2021年現在も判明していない。状況からして何らかの事件に被害者として巻き込まれたと考えられている。捜査継続中。
【自家用車と共に失踪】
2001年10月29日(月曜日)、大高さんが勤務先に出社せず無断欠勤した。大高さんは一人暮らしをしており、心配した上司が大高さんの妹にも連絡を取って一緒に家を家を訪れてみると、勝手口のガラス戸が割られていて明らかに不審な様子であっった。
警察が入ると、室内には多くの血痕が残されていた。特に居間のカーペットのそれは直径40センチもの円状になっていたほか、居間から勝手口方面に向かって点々と血が落ちていた。鑑定の結果、血痕は大高さんと同じA型と判明する。
引き出しも物色された様子で、室内には大きさの異なる2種類の靴跡が残されていた。更には電話線までも切断されていた。状況からして大高さんは何かしら事件に巻き込まれたとみてまず間違いない。自家用車のトヨタ・カリーナも無くなっており、警察は大高さんが自分の車に乗せられて何処かへ連れ去られたのだと考えた。
【車だけが見つかって】
11月1日より公開捜査を開始。大高さんの最後の目撃証言は10月26日(金曜日)夜にパチンコ店を出て行くところで、27日明け方に大高さん宅前を通りがかった牛乳配達員は、普段は照明の付いていない時間帯にもかかわらず、勝手口から灯が漏れ出ているのを見たという。すなわち、大高さんは27日明け方に車に乗せて連れ出された可能性が高い。
大高さんのカリーナは、ナンバープレートなどの情報を頼りに捜査すると、10月27日に茨城県北部を北上していき、28日には宮城県内を走行していることが分かった。
12月20日、仙台駅西口の駐車場でカリーナを発見。雪が10センチ以上も積もった状態で放置されているのを管理者が不審に思い、ナンバーを宮城県警に届け出たところで行方が判明した。トランク内にシートが敷かれており、そこには乾燥した血痕が残っていたが、これもやはりA型。しかし、大高さん本人の行方は依然として分からずじまいである。
【預金を引き出した不審な男】
10月27日、大高さんの車が自宅を離れて宮城県方面へと北上していった日であるが、この日の午前9時20分頃に水戸市内のATMで大高さんの銀行口座から約200万円が引き出されていた。
防犯カメラに映るのは帽子にマスク姿の男。映像を見た大高さんの妹は「兄ではない」と証言する。この男は暗証番号を1回も間違えることなく速やかに現金を引き出していた。大高さん本人に暴行を加えるなどして無理やりに暗証番号を聞き出したものと思われる。
なお、大高さんの家からは定期預金の通帳も無くなっていたが、こちらは引き出された形跡が無かった。定期預金を引き出すには銀行職員と顔を合わせざるを得ないため断念した可能性が高い。
【捜査は続く】
大高さんが失踪する数日前、大高さん宅の前に不審な車が止まっているのを、早朝訪れた新聞配達員が目撃している。この時間帯に新聞・牛乳配達以外の車両が通りがかることはほとんど無く、印象に残っているという。これについて警察は犯人が下見に訪れていた可能性があるとみている。
そして割られた勝手口ドアのガラスには粘着テープがつけられていた。これは破片を散らばさず、音を立てないようにガラスを割るための"工作"と考えられる。さらには上記のとおり電話線までも切られており、本事件は、決して突発的ではない、周到に準備された計画的犯行ということが伺える。
大高さんは実直な人物で、職場での信頼も厚く、プライベートでは病気の母と姉を献身的に介護していた。とてもトラブルに関わるような人物ではない。現場に残された足跡から犯人は2人(以上)いるようだが、彼らは一体どうして大高さんを狙ったのだろう。よく手入れされた庭のある一軒家を持ちながら一人暮らしを続ける男性ということで金を持っているように見られたのか?大高さんの数少ない趣味の一つがパチンコだが、そこで出会ったのか?犯人像は判然としていない。
【参考リンク】
茨城県警による情報提供呼びかけページは以下。
https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a04_jiken/unsolved/omitama.html
【類似する事件】
杵渕さん夫婦失踪事件(2001年)
同年に千葉県で発生した事件。<1>被害者夫婦は自宅に大量の血痕を遺して自家用車と共に失踪、 <2>後に車は見つかったが被害者は依然行方不明、<3>別人が被害者に成りすまして預金を引き出したといった点が本事件と類似する。なお、この事件では車は愛知県で見つかり、犯人は実印を使って定期預金を解約している。
周囲の証言から、この事件の犯人は警官を装って被害者夫婦に接触したようだ。もしも同じような手口で大高さんに接触していたとしたら…?半年違いで発生しているだけに気になるところだ。
【出典】
朝日新聞2001年11月2日「自宅に血痕、58歳不明 茨城」
朝日新聞2001年11月2日「安否気づかう「恨まれる人ではない」小川町の会社員不明 /茨城」
毎日新聞2001年11月2日「自宅に血痕残し、会社員が行方不明ーー茨城・小川町」
読売新聞2001年11月2日「会社員が失そう 200万円引き出され、自室に血痕/茨城・小川」
読売新聞2001年11月2日「小川の行方不明 広範囲に血痕 拉致の疑い 別人が預金引き落とし=茨城」
毎日新聞2001年11月3日「小川町の会社員不明 退社後、パチンコ店へ/茨城」
読売新聞2001年11月3日「小川の不明会社員の預金引き出し 暗証番号1回で=茨城」
朝日新聞2001年11月4日「不明会社員は帰宅前パチンコ店に 自宅周辺には靴跡数種 /茨城」
毎日新聞2001年11月4日「小川町の会社員不明 明け方、部屋に明かりーー連れ去りは27日以降か/茨城」
読売新聞2001年11月4日「小川の不明会社員宅 2種類の靴跡 複数犯の可能性濃厚に 電話線も切断=茨城」
読売新聞2001年11月5日「小川の不明会社員宅 消音?勝手口ドアのガラスにテープ 計画的犯行か=茨城」
朝日新聞2001年11月6日「不明会社員の車、走行確認 同日に預金を引き出し /茨城」
読売新聞2001年11月6日「小川の会社員不明 自宅近くに不審な車 事件直前の数日、事前に下見か=茨城」
朝日新聞2001年11月8日「公開捜査から1週間、捜査難航 行方不明の小川町会社員 /茨城」
読売新聞2001年11月8日「小川の会社員、足取り依然不明 公開捜査1週間 複数犯が連れ去る?=茨城」
朝日新聞2001年12月21日「小川町の不明会社員の車、仙台市内で発見 /茨城」
毎日新聞2001年12月21日「小川町の会社員不明、仙台で車を発見ーー県警と石岡署 /茨城」
読売新聞2001年12月21日「小川の不明会社員の車 仙台市内で発見=茨城」
朝日新聞2001年12月22日「不明会社員の車、石岡署に 内部の検証続く /茨城」
読売新聞2001年12月22日「仙台で発見の不明会社員の車 トランクから血痕=茨城」
毎日新聞2001年12月23日「小川町の会社員不明 乗用車を検証、トランクから血痕ーー県警/茨城」
毎日新聞2001年12月28日「小川町の会社員不明 トランクの血液型、大高さんと同じA /茨城」
読売新聞2002年11月3日「小川の不明会社員 公開捜査から1年、依然手掛かりなし=茨城」
東京新聞2002年11月8日「前線日記 茨城・大高さん失跡1年 実直な人柄「なぜ…」」
【自家用車と共に失踪】
2001年10月29日(月曜日)、大高さんが勤務先に出社せず無断欠勤した。大高さんは一人暮らしをしており、心配した上司が大高さんの妹にも連絡を取って一緒に家を家を訪れてみると、勝手口のガラス戸が割られていて明らかに不審な様子であっった。
警察が入ると、室内には多くの血痕が残されていた。特に居間のカーペットのそれは直径40センチもの円状になっていたほか、居間から勝手口方面に向かって点々と血が落ちていた。鑑定の結果、血痕は大高さんと同じA型と判明する。
引き出しも物色された様子で、室内には大きさの異なる2種類の靴跡が残されていた。更には電話線までも切断されていた。状況からして大高さんは何かしら事件に巻き込まれたとみてまず間違いない。自家用車のトヨタ・カリーナも無くなっており、警察は大高さんが自分の車に乗せられて何処かへ連れ去られたのだと考えた。
【車だけが見つかって】
11月1日より公開捜査を開始。大高さんの最後の目撃証言は10月26日(金曜日)夜にパチンコ店を出て行くところで、27日明け方に大高さん宅前を通りがかった牛乳配達員は、普段は照明の付いていない時間帯にもかかわらず、勝手口から灯が漏れ出ているのを見たという。すなわち、大高さんは27日明け方に車に乗せて連れ出された可能性が高い。
大高さんのカリーナは、ナンバープレートなどの情報を頼りに捜査すると、10月27日に茨城県北部を北上していき、28日には宮城県内を走行していることが分かった。
12月20日、仙台駅西口の駐車場でカリーナを発見。雪が10センチ以上も積もった状態で放置されているのを管理者が不審に思い、ナンバーを宮城県警に届け出たところで行方が判明した。トランク内にシートが敷かれており、そこには乾燥した血痕が残っていたが、これもやはりA型。しかし、大高さん本人の行方は依然として分からずじまいである。
【預金を引き出した不審な男】
10月27日、大高さんの車が自宅を離れて宮城県方面へと北上していった日であるが、この日の午前9時20分頃に水戸市内のATMで大高さんの銀行口座から約200万円が引き出されていた。
防犯カメラに映るのは帽子にマスク姿の男。映像を見た大高さんの妹は「兄ではない」と証言する。この男は暗証番号を1回も間違えることなく速やかに現金を引き出していた。大高さん本人に暴行を加えるなどして無理やりに暗証番号を聞き出したものと思われる。
なお、大高さんの家からは定期預金の通帳も無くなっていたが、こちらは引き出された形跡が無かった。定期預金を引き出すには銀行職員と顔を合わせざるを得ないため断念した可能性が高い。
【捜査は続く】
大高さんが失踪する数日前、大高さん宅の前に不審な車が止まっているのを、早朝訪れた新聞配達員が目撃している。この時間帯に新聞・牛乳配達以外の車両が通りがかることはほとんど無く、印象に残っているという。これについて警察は犯人が下見に訪れていた可能性があるとみている。
そして割られた勝手口ドアのガラスには粘着テープがつけられていた。これは破片を散らばさず、音を立てないようにガラスを割るための"工作"と考えられる。さらには上記のとおり電話線までも切られており、本事件は、決して突発的ではない、周到に準備された計画的犯行ということが伺える。
大高さんは実直な人物で、職場での信頼も厚く、プライベートでは病気の母と姉を献身的に介護していた。とてもトラブルに関わるような人物ではない。現場に残された足跡から犯人は2人(以上)いるようだが、彼らは一体どうして大高さんを狙ったのだろう。よく手入れされた庭のある一軒家を持ちながら一人暮らしを続ける男性ということで金を持っているように見られたのか?大高さんの数少ない趣味の一つがパチンコだが、そこで出会ったのか?犯人像は判然としていない。
【参考リンク】
茨城県警による情報提供呼びかけページは以下。
https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a04_jiken/unsolved/omitama.html
【類似する事件】
杵渕さん夫婦失踪事件(2001年)
同年に千葉県で発生した事件。<1>被害者夫婦は自宅に大量の血痕を遺して自家用車と共に失踪、 <2>後に車は見つかったが被害者は依然行方不明、<3>別人が被害者に成りすまして預金を引き出したといった点が本事件と類似する。なお、この事件では車は愛知県で見つかり、犯人は実印を使って定期預金を解約している。
周囲の証言から、この事件の犯人は警官を装って被害者夫婦に接触したようだ。もしも同じような手口で大高さんに接触していたとしたら…?半年違いで発生しているだけに気になるところだ。
【出典】
朝日新聞2001年11月2日「自宅に血痕、58歳不明 茨城」
朝日新聞2001年11月2日「安否気づかう「恨まれる人ではない」小川町の会社員不明 /茨城」
毎日新聞2001年11月2日「自宅に血痕残し、会社員が行方不明ーー茨城・小川町」
読売新聞2001年11月2日「会社員が失そう 200万円引き出され、自室に血痕/茨城・小川」
読売新聞2001年11月2日「小川の行方不明 広範囲に血痕 拉致の疑い 別人が預金引き落とし=茨城」
毎日新聞2001年11月3日「小川町の会社員不明 退社後、パチンコ店へ/茨城」
読売新聞2001年11月3日「小川の不明会社員の預金引き出し 暗証番号1回で=茨城」
朝日新聞2001年11月4日「不明会社員は帰宅前パチンコ店に 自宅周辺には靴跡数種 /茨城」
毎日新聞2001年11月4日「小川町の会社員不明 明け方、部屋に明かりーー連れ去りは27日以降か/茨城」
読売新聞2001年11月4日「小川の不明会社員宅 2種類の靴跡 複数犯の可能性濃厚に 電話線も切断=茨城」
読売新聞2001年11月5日「小川の不明会社員宅 消音?勝手口ドアのガラスにテープ 計画的犯行か=茨城」
朝日新聞2001年11月6日「不明会社員の車、走行確認 同日に預金を引き出し /茨城」
読売新聞2001年11月6日「小川の会社員不明 自宅近くに不審な車 事件直前の数日、事前に下見か=茨城」
朝日新聞2001年11月8日「公開捜査から1週間、捜査難航 行方不明の小川町会社員 /茨城」
読売新聞2001年11月8日「小川の会社員、足取り依然不明 公開捜査1週間 複数犯が連れ去る?=茨城」
朝日新聞2001年12月21日「小川町の不明会社員の車、仙台市内で発見 /茨城」
毎日新聞2001年12月21日「小川町の会社員不明、仙台で車を発見ーー県警と石岡署 /茨城」
読売新聞2001年12月21日「小川の不明会社員の車 仙台市内で発見=茨城」
朝日新聞2001年12月22日「不明会社員の車、石岡署に 内部の検証続く /茨城」
読売新聞2001年12月22日「仙台で発見の不明会社員の車 トランクから血痕=茨城」
毎日新聞2001年12月23日「小川町の会社員不明 乗用車を検証、トランクから血痕ーー県警/茨城」
毎日新聞2001年12月28日「小川町の会社員不明 トランクの血液型、大高さんと同じA /茨城」
読売新聞2002年11月3日「小川の不明会社員 公開捜査から1年、依然手掛かりなし=茨城」
東京新聞2002年11月8日「前線日記 茨城・大高さん失跡1年 実直な人柄「なぜ…」」