1999年5月3日午前8時50分頃、茨城県つくば市高田の山林で、一部が白骨化した女性の遺体が発見された。指紋から、白骨化遺体は筑波大学工学基礎学類1年生の川俣智美(さとみ)さんと判明。川俣さんは4月10日を最後に連絡が取れなくなり、14日に捜索願が出されていた。
2021年8月現在も川俣さんを殺害した犯人は特定できていない。2010年の刑事訴訟法改正により、殺人罪の公訴時効が撤廃されたため、本事件は捜査が継続している。
【入学してわずか4日後】
川俣さんは神奈川県藤沢市の出身。一浪して第一志望だった筑波大学に合格し、学生寮に入るため入学式前日の4月6日につくば市へ引っ越してきた。それからわずか4日後に忽然と姿を消す。10日の昼過ぎに電話で話したのが両親との最後の会話となってしまった。
遺体で発見されたのはつくば秀英高校から北に約150メートルほど離れた場所にある山林。どうしてこんなところに。遺体は紺色のソックスと白っぽい下着のみの姿で、周辺で靴が見つからなかったことから、どこか別の場所で殺害されてから車で運ばれて遺棄されたのだと考えられている。
司法解剖の結果、死因は窒息死と断定。首にはキャミソールが巻き付けられていた。おそらくこれで絞められたのだろう。切り傷や打撲痕などは無かった模様。死亡してからは2週間以上経過しているとみられている。遺体が発見されたのは5月に入ってからだが、現場付近では4月のうちから異臭がしたとの証言もあり、失踪直後に殺害されて遺棄された可能性が高そうだ。
【不審な外国人?】
周りは一人暮らしを始めたばかりの学生がほとんど。皆が自分のことで精一杯で、川俣さんと深い付き合いのある友人は未だいなかった。入学直後に休学する学生というのはしばしばいるもので、川俣さんが突然失踪してもあまり気に留められることはなかったらしい。
それでも警察の調査により、重要そうな証言がいくつか得られている。それによれば、川俣さんは、入学式のあった4月7日の午後、学生宿舎付近で長身の外国人から声をかけられていたとのこと。川俣さんはこの事について「英語と日本語混じりで話すイタリア人に声をかけられた」と語っていたという。
4月10日午後17時過ぎには学生寮の内線電話で「食事に誘われたので今日のコンパには行けない」と話し、同日18時過ぎには長身の外国人と並んで歩いているのを目撃された。そして彼らは何処かへ消えた…。遺体の胃からは少量の残留物が確認されたとのことで、食事をしたのは事実と思われるが果たして。なお、寮の部屋は鍵がかけられていて、室内を荒らされたような形跡は無かったとのこと。
警察はこの"外国人男性"こそが事件の鍵を握る重要参考人であるとして行方を追っている。しかし2021年現在も身元を特定できていない。
【難航する捜査】
目撃された外国人は、白人系で、身長は約185〜190センチ。髪が濃い茶色で、眉は太く、目も口も大きく、年齢は20代くらいらしい。同じようなルックスの外国人に声をかけられたという女子学生が何名かいたことから、この外国人は筑波大学の女子学生に手当たり次第声をかけていて、たまたま応じた川俣さんがターゲットにされてしまったのかもしれない。
川俣さんは「イタリア人」から声をかけられたと語っていたが、男が本当にイタリア国籍なのかは不明。警察はあくまで"自称"イタリア人として扱い、イタリア人だけに限定せずに市内の外国人をひたすら調査したが、有力な手がかりは得られていない。つくば市は外国人登録者数が約5000人と茨城県内では最も多く、筑波大学の外国人留学生は日本で4番目に多い(※いずれも事件当時)しかも短期滞在者や、さらには不法滞在者まで存在していることから、いくら「外国人」で「高身長」という特徴があっても、捜査対象は星の数の如く広がっているのだ。
その上、外国人たちは、警察から声をかけられても「自分が疑われているのではないか」という不信感から、なかなか真実を話そうとしない。同郷のコミュニティも強く、仲間の情報を迂闊にバラしたりはしない。こういった事情も捜査が難航する一因として指摘されている。
【リンク】
茨城県警による情報提供呼びかけページは以下。
https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a04_jiken/atrocious_crime/heisei16/tsukuba02.html
【出典】
朝日新聞1999年5月4日「山林に女性遺体 藤沢出身の筑波大生 茨城・つくば」
朝日新聞1999年5月4日「静かな農村に衝撃 不安訴える住民 つくばの女性遺体」
茨城新聞1999年5月4日「女子大生殺される 入学直後から不明 首に布、山林で遺体発見」
産経新聞1999年5月4日「山林に女子学生遺体 筑波大1年 入学式後に失跡 つくば市」
毎日新聞1999年5月4日「女子学生、殺される 茨城・つくばの林で発見、入学直後に捜索願」
読売新聞1999年5月4日「筑波大女子学生殺される 入学直後、山林で発見」
朝日新聞1999年5月5日「不明の直前「食事へ誘われた」絞殺された筑波大生」
朝日新聞1999年5月5日「連れの男性 特定へ捜査 筑波大生殺し」
茨城新聞1999年5月5日「筑波大女子学生殺害事件 不明直前、夕食の誘い 外国人男性、確認へ」
産経新聞1999年5月5日「筑波大生絞殺 白人男性が食事に誘う その後に失跡」
毎日新聞1999年5月5日「足取り確認急ぐ 筑波大学生遺棄事件」
読売新聞1999年5月5日「筑波大生殺人 行方不明直前、何者か夕食に誘う 学内を外国人と歩く姿」
産経新聞1999年5月6日「筑波大生絞殺事件 白人男性はイタリア人? 失跡直前「誘われた」」
毎日新聞1999年5月6日「白人の男性と立ち話、不明直前に学生が目撃 筑波大学女子生殺害事件」
朝日新聞1999年5月7日「一緒の?外国人、入学式当日も 筑波大生殺害事件」
朝日新聞1999年5月7日「外国人の特定急ぐ 情報求めフリーダイヤル 筑波大生殺人」
読売新聞1999年5月7日「筑波大生殺人事件 白人男性が姿消す 県警、行方などの情報追う」
朝日新聞1999年5月8日「情報求める看板を設置 筑波大生殺人」
読売新聞1999年5月8日「筑波大生殺人事件 夕食に誘った外国人、イタリア人装う?」
朝日新聞1999年5月10日「外国人?手がかりなく 筑波大生遺体発見から1週間」
読売新聞1999年5月10日「筑波大生遺体発見から1週間 有力な手掛かり得られず」
朝日新聞1999年5月16日「有力手がかり得られず 筑波大生遺体発見から2週間」
朝日新聞1999年6月3日「筑波大生遺体発見から1ヵ月 依然、有力情報なく」
産経新聞1999年6月3日「筑波大女子学生殺人事件から1カ月 カギ握るイタリア人男性はどこへ」
読売新聞1999年6月3日「筑波大の女子学生殺し 手掛かりなく1か月 白人男性、所在確認急ぐ」
朝日新聞1999年7月15日「似顔絵チラシ配布へ 捜査本部、飲食店などに 筑波大生殺人」
朝日新聞2000年5月2日「情報少なく捜査難航 筑波大生殺人、あす遺体発見から1年」
読売新聞2000年5月3日「筑波大生殺害 捜査難航のまま1年 のべ2万人から事情聞く」
2021年8月現在も川俣さんを殺害した犯人は特定できていない。2010年の刑事訴訟法改正により、殺人罪の公訴時効が撤廃されたため、本事件は捜査が継続している。
【入学してわずか4日後】
川俣さんは神奈川県藤沢市の出身。一浪して第一志望だった筑波大学に合格し、学生寮に入るため入学式前日の4月6日につくば市へ引っ越してきた。それからわずか4日後に忽然と姿を消す。10日の昼過ぎに電話で話したのが両親との最後の会話となってしまった。
遺体で発見されたのはつくば秀英高校から北に約150メートルほど離れた場所にある山林。どうしてこんなところに。遺体は紺色のソックスと白っぽい下着のみの姿で、周辺で靴が見つからなかったことから、どこか別の場所で殺害されてから車で運ばれて遺棄されたのだと考えられている。
司法解剖の結果、死因は窒息死と断定。首にはキャミソールが巻き付けられていた。おそらくこれで絞められたのだろう。切り傷や打撲痕などは無かった模様。死亡してからは2週間以上経過しているとみられている。遺体が発見されたのは5月に入ってからだが、現場付近では4月のうちから異臭がしたとの証言もあり、失踪直後に殺害されて遺棄された可能性が高そうだ。
【不審な外国人?】
周りは一人暮らしを始めたばかりの学生がほとんど。皆が自分のことで精一杯で、川俣さんと深い付き合いのある友人は未だいなかった。入学直後に休学する学生というのはしばしばいるもので、川俣さんが突然失踪してもあまり気に留められることはなかったらしい。
それでも警察の調査により、重要そうな証言がいくつか得られている。それによれば、川俣さんは、入学式のあった4月7日の午後、学生宿舎付近で長身の外国人から声をかけられていたとのこと。川俣さんはこの事について「英語と日本語混じりで話すイタリア人に声をかけられた」と語っていたという。
4月10日午後17時過ぎには学生寮の内線電話で「食事に誘われたので今日のコンパには行けない」と話し、同日18時過ぎには長身の外国人と並んで歩いているのを目撃された。そして彼らは何処かへ消えた…。遺体の胃からは少量の残留物が確認されたとのことで、食事をしたのは事実と思われるが果たして。なお、寮の部屋は鍵がかけられていて、室内を荒らされたような形跡は無かったとのこと。
警察はこの"外国人男性"こそが事件の鍵を握る重要参考人であるとして行方を追っている。しかし2021年現在も身元を特定できていない。
【難航する捜査】
目撃された外国人は、白人系で、身長は約185〜190センチ。髪が濃い茶色で、眉は太く、目も口も大きく、年齢は20代くらいらしい。同じようなルックスの外国人に声をかけられたという女子学生が何名かいたことから、この外国人は筑波大学の女子学生に手当たり次第声をかけていて、たまたま応じた川俣さんがターゲットにされてしまったのかもしれない。
川俣さんは「イタリア人」から声をかけられたと語っていたが、男が本当にイタリア国籍なのかは不明。警察はあくまで"自称"イタリア人として扱い、イタリア人だけに限定せずに市内の外国人をひたすら調査したが、有力な手がかりは得られていない。つくば市は外国人登録者数が約5000人と茨城県内では最も多く、筑波大学の外国人留学生は日本で4番目に多い(※いずれも事件当時)しかも短期滞在者や、さらには不法滞在者まで存在していることから、いくら「外国人」で「高身長」という特徴があっても、捜査対象は星の数の如く広がっているのだ。
その上、外国人たちは、警察から声をかけられても「自分が疑われているのではないか」という不信感から、なかなか真実を話そうとしない。同郷のコミュニティも強く、仲間の情報を迂闊にバラしたりはしない。こういった事情も捜査が難航する一因として指摘されている。
【リンク】
茨城県警による情報提供呼びかけページは以下。
https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a04_jiken/atrocious_crime/heisei16/tsukuba02.html
【出典】
朝日新聞1999年5月4日「山林に女性遺体 藤沢出身の筑波大生 茨城・つくば」
朝日新聞1999年5月4日「静かな農村に衝撃 不安訴える住民 つくばの女性遺体」
茨城新聞1999年5月4日「女子大生殺される 入学直後から不明 首に布、山林で遺体発見」
産経新聞1999年5月4日「山林に女子学生遺体 筑波大1年 入学式後に失跡 つくば市」
毎日新聞1999年5月4日「女子学生、殺される 茨城・つくばの林で発見、入学直後に捜索願」
読売新聞1999年5月4日「筑波大女子学生殺される 入学直後、山林で発見」
朝日新聞1999年5月5日「不明の直前「食事へ誘われた」絞殺された筑波大生」
朝日新聞1999年5月5日「連れの男性 特定へ捜査 筑波大生殺し」
茨城新聞1999年5月5日「筑波大女子学生殺害事件 不明直前、夕食の誘い 外国人男性、確認へ」
産経新聞1999年5月5日「筑波大生絞殺 白人男性が食事に誘う その後に失跡」
毎日新聞1999年5月5日「足取り確認急ぐ 筑波大学生遺棄事件」
読売新聞1999年5月5日「筑波大生殺人 行方不明直前、何者か夕食に誘う 学内を外国人と歩く姿」
産経新聞1999年5月6日「筑波大生絞殺事件 白人男性はイタリア人? 失跡直前「誘われた」」
毎日新聞1999年5月6日「白人の男性と立ち話、不明直前に学生が目撃 筑波大学女子生殺害事件」
朝日新聞1999年5月7日「一緒の?外国人、入学式当日も 筑波大生殺害事件」
朝日新聞1999年5月7日「外国人の特定急ぐ 情報求めフリーダイヤル 筑波大生殺人」
読売新聞1999年5月7日「筑波大生殺人事件 白人男性が姿消す 県警、行方などの情報追う」
朝日新聞1999年5月8日「情報求める看板を設置 筑波大生殺人」
読売新聞1999年5月8日「筑波大生殺人事件 夕食に誘った外国人、イタリア人装う?」
朝日新聞1999年5月10日「外国人?手がかりなく 筑波大生遺体発見から1週間」
読売新聞1999年5月10日「筑波大生遺体発見から1週間 有力な手掛かり得られず」
朝日新聞1999年5月16日「有力手がかり得られず 筑波大生遺体発見から2週間」
朝日新聞1999年6月3日「筑波大生遺体発見から1ヵ月 依然、有力情報なく」
産経新聞1999年6月3日「筑波大女子学生殺人事件から1カ月 カギ握るイタリア人男性はどこへ」
読売新聞1999年6月3日「筑波大の女子学生殺し 手掛かりなく1か月 白人男性、所在確認急ぐ」
朝日新聞1999年7月15日「似顔絵チラシ配布へ 捜査本部、飲食店などに 筑波大生殺人」
朝日新聞2000年5月2日「情報少なく捜査難航 筑波大生殺人、あす遺体発見から1年」
読売新聞2000年5月3日「筑波大生殺害 捜査難航のまま1年 のべ2万人から事情聞く」