2018年10月25日午前7時15分頃、愛知県名古屋市中川区中京南通にあるパチンコメーカー「高尾」本社敷地内の車庫で、同社の社長である内ヶ島 正規さん(39歳)が血を流して死んでいるのを、出社した男性従業員が発見して110番通報した。
社長が会社の敷地内で殺されるという餃子の王将社長射殺事件にも似た異常事態。現場周囲の防犯カメラには犯人らしき不審人物が映っていたが、2021年6月現在もその人物の身元を特定することはできていない。未解決事件。
【会社の情報】
パチンコ遊戯機の開発及び製造・販売を事業とする株式会社高尾は1979年設立。事件当時の年商はおよそ200億円で業界12位。近年では「カイジ」のパチンコ台が有名。従業員数は約200人。
会社は同族経営で、創業者の孫にあたる内ヶ島 正規さんは2016年から社長を務めていた。事件後もやはり内ヶ島一族の人間が新・社長に就いている。
【社長、会社敷地で殺される】
内ヶ島さんはスーツ姿のままで、首や腹などに複数の刺し傷があった。司法解剖の結果、死因は首を刃物で深く刺されたことによる失血死。発見時は死後数時間から始まる死後硬直がみられた。したがって殺害されたのは24日深夜から25日未明と推定されている。
内ヶ島さんは24日夜に社員らとの食事会に参加した後、22時過ぎに帰社してしばらく一人で仕事をしていたらしい。通勤には車を使っており、仕事を終えて帰宅しようと通用口を出て車庫に向かおうとしたところを襲撃されたと見做されている。
犯人とは激しく争ったようで、遺体の腕などには防御創も確認された。同じ頃、近所の住人が「人が激しく言い争うのを聞いた」と伝える報道もある。
遺体のそばには凶器となった刃渡り18センチの包丁と、内ヶ島さんのカバン、ケータイが残されていた。現金など金目のものが奪われたという報道は無く、強盗ではなく怨恨に基づいた犯行と考えてよさそうだ。
【不審者】
深夜に起こった事件で、現場周辺は人通りも少なく、目撃証言は皆無である。しかし防犯カメラには、みるからに不審な人物が社屋東側フェンスを乗り越えて会社敷地に侵入し、車庫の裏手から社屋に続く通路など同社の敷地内を歩き回る様子が映っていた。犯行の決定的瞬間は映っていないが、この不審人物が犯人とみてまず間違いあるまい。
愛知県警は映像を公開している。公式youtubeチャンネルはこちら。映像によれば、不審人物は身長160~170センチくらいで中肉。つなぎのような服を着て、さらにキャップ帽、メガネ、マスク、ヘッドホンをしていて人相などは読み取れない。深夜のオフィスには全く不似合いで不気味な出で立ちだ。なお、不審者は全身真っ白に見えるが、これは暗闇での映像に処理をかけているためで、正確な着衣の色や柄などは分かっていない。捜査関係者はこの不審人物が右足を引きずるようにして歩いているとも指摘している。
不審人物は右手に火の付いたタバコのようなものをもっていた。喫煙者なのだろうか。もしポイ捨てでもしていれば、DNAなど重要な情報が得られそうなところだが、そのような報道は無く、しっかり持ち去ったようである。また、ナップザックを背負っており、ここに凶器となった包丁が入っていたとみられる。
高尾社のオフィスは夜間は警備員が不在になり、3箇所有る入り口は全て封鎖される。不審人物はそのこともあらかじめ知っていたようで、社屋東側のフェンスを乗り越えて軽々と敷地内に侵入してきた。内ヶ島さんの退社時の行動パターンも把握していたとみられ、襲撃は極めて計画的に実行されたものと考えられる。襲撃場所は防犯カメラの死角になっており、このことさえも分かっていたかのもしれない。
敷地東側フェンスには血痕が付着しており、犯人は逃走時にもこのフェンスを乗り越えたとされている。殺害現場では内ヶ島さんの流した血が海のようになっていたが、一部内ヶ島さん以外の血痕も確認された。争う中で犯人も負傷した可能性が高い。今後分析が進むことが期待される。
【トラブル】
内ヶ島さんは2017年4月、フィリピンのマニラで車に乗っていたところ、オートバイに乗った2人組の男に銃撃されたことがあった。内ヶ島さんに怪我は無かったものの、同行していた日本人男性が死亡。捜査関係者もこの銃撃事件について把握している。
また、事件のあった2018年は、高尾社の製造したパチンコ台の出玉が事前の説明よりも悪く、取引先からクレームが殺到して一騒動になっていた。内ヶ島さん自ら関係各所に謝罪して回る一方で、責任を押し付けられる格好となった営業職の人間が事件前に相次いで退職していたという。取引先への補償も検討されていたところで、そうしたこともあってか内ヶ島さんは事件前は業界団体の会合に顔を出さなくなっていたと報道されている。
こうしたトラブルが本事件に繋がったかは定かでないが、警察は関連性を慎重に捜査している模様。
【参考リンク】
愛知県警による情報提供呼びかけページは以下。
https://www.pref.aichi.jp/police/anzen/sousa/kobetsu/nakagawa/nakagawa-201810.html
【出典】
朝日新聞2018年10月25日「名古屋の会社車庫に遺体 愛知県警、殺人容疑で捜査」
読売新聞2018年10月25日「車庫に遺体? 殺人で捜査 名古屋」
朝日新聞2018年10月26日「パチンコメーカー「高尾」社長が死亡 殺人事件と断定」
朝日新聞2018年10月26日「前夜に歩く不審者、防犯カメラに映像 パチンコ会社長殺害」
産経新聞2018年10月26日「パチンコ機社長 殺害 名古屋 首や腹に刃物傷」
読売新聞2018年10月26日「パチンコメーカー社長が刺され死亡 名古屋・会社車庫で」
朝日新聞2018年10月27日「社長の退社数十分前、塀乗り越える侵入者 付近のカメラに パチンコ機器会社」
読売新聞2018年10月27日「名古屋社長刺殺 防犯カメラに不審者 前夜、会社敷地歩き回る」
東海テレビ2018年10月30日「パチンコ台性能、相次ぐ退職…社長殺害のパチンコ機器メーカー 元従業員が明かす数々のトラブル」
朝日新聞2018年11月1日「現場・行動パターン、詳細把握か パチンコ機器会社長殺害1週間」
毎日新聞2018年11月6日「名古屋・社長殺害:現場の包丁、刃渡り18センチ フェンスに血痕」
読売新聞2018年11月8日「凶器は包丁 刃渡り18センチ 名古屋の社長刺殺事件」
朝日新聞2018年11月14日「県警、不審な男の映像公開 パチンコ機器社長、刺殺事件」
毎日新聞2018年11月15日「名古屋・社長殺害:防犯カメラ画像公開 愛知県警」
読売新聞2018年11月15日「防犯カメラ 男の映像 名古屋社長刺殺 会社敷地歩き回る」
読売新聞2018年11月24日「被害者以外の血液検出 名古屋社長刺殺 あす1か月」
朝日新聞2018年11月25日「現場周辺の血痕、被害者と別人も パチンコ会社長殺害」
毎日新聞2018年11月25日「名古屋・パチンコ台メーカー社長殺害:現場に別人の血痕 退社時、行動熟知か/同時間、言い争う声」
朝日新聞2019年5月6日「有力手がかり、得られず 名古屋、パチンコ機器社長殺害半年」
朝日新聞2019年10月18日「不審者の映像、新たに公開 パチンコ機器社長刺殺1年」
社長が会社の敷地内で殺されるという餃子の王将社長射殺事件にも似た異常事態。現場周囲の防犯カメラには犯人らしき不審人物が映っていたが、2021年6月現在もその人物の身元を特定することはできていない。未解決事件。
【会社の情報】
パチンコ遊戯機の開発及び製造・販売を事業とする株式会社高尾は1979年設立。事件当時の年商はおよそ200億円で業界12位。近年では「カイジ」のパチンコ台が有名。従業員数は約200人。
会社は同族経営で、創業者の孫にあたる内ヶ島 正規さんは2016年から社長を務めていた。事件後もやはり内ヶ島一族の人間が新・社長に就いている。
【社長、会社敷地で殺される】
内ヶ島さんはスーツ姿のままで、首や腹などに複数の刺し傷があった。司法解剖の結果、死因は首を刃物で深く刺されたことによる失血死。発見時は死後数時間から始まる死後硬直がみられた。したがって殺害されたのは24日深夜から25日未明と推定されている。
内ヶ島さんは24日夜に社員らとの食事会に参加した後、22時過ぎに帰社してしばらく一人で仕事をしていたらしい。通勤には車を使っており、仕事を終えて帰宅しようと通用口を出て車庫に向かおうとしたところを襲撃されたと見做されている。
犯人とは激しく争ったようで、遺体の腕などには防御創も確認された。同じ頃、近所の住人が「人が激しく言い争うのを聞いた」と伝える報道もある。
遺体のそばには凶器となった刃渡り18センチの包丁と、内ヶ島さんのカバン、ケータイが残されていた。現金など金目のものが奪われたという報道は無く、強盗ではなく怨恨に基づいた犯行と考えてよさそうだ。
【不審者】
深夜に起こった事件で、現場周辺は人通りも少なく、目撃証言は皆無である。しかし防犯カメラには、みるからに不審な人物が社屋東側フェンスを乗り越えて会社敷地に侵入し、車庫の裏手から社屋に続く通路など同社の敷地内を歩き回る様子が映っていた。犯行の決定的瞬間は映っていないが、この不審人物が犯人とみてまず間違いあるまい。
愛知県警は映像を公開している。公式youtubeチャンネルはこちら。映像によれば、不審人物は身長160~170センチくらいで中肉。つなぎのような服を着て、さらにキャップ帽、メガネ、マスク、ヘッドホンをしていて人相などは読み取れない。深夜のオフィスには全く不似合いで不気味な出で立ちだ。なお、不審者は全身真っ白に見えるが、これは暗闇での映像に処理をかけているためで、正確な着衣の色や柄などは分かっていない。捜査関係者はこの不審人物が右足を引きずるようにして歩いているとも指摘している。
不審人物は右手に火の付いたタバコのようなものをもっていた。喫煙者なのだろうか。もしポイ捨てでもしていれば、DNAなど重要な情報が得られそうなところだが、そのような報道は無く、しっかり持ち去ったようである。また、ナップザックを背負っており、ここに凶器となった包丁が入っていたとみられる。
高尾社のオフィスは夜間は警備員が不在になり、3箇所有る入り口は全て封鎖される。不審人物はそのこともあらかじめ知っていたようで、社屋東側のフェンスを乗り越えて軽々と敷地内に侵入してきた。内ヶ島さんの退社時の行動パターンも把握していたとみられ、襲撃は極めて計画的に実行されたものと考えられる。襲撃場所は防犯カメラの死角になっており、このことさえも分かっていたかのもしれない。
敷地東側フェンスには血痕が付着しており、犯人は逃走時にもこのフェンスを乗り越えたとされている。殺害現場では内ヶ島さんの流した血が海のようになっていたが、一部内ヶ島さん以外の血痕も確認された。争う中で犯人も負傷した可能性が高い。今後分析が進むことが期待される。
【トラブル】
内ヶ島さんは2017年4月、フィリピンのマニラで車に乗っていたところ、オートバイに乗った2人組の男に銃撃されたことがあった。内ヶ島さんに怪我は無かったものの、同行していた日本人男性が死亡。捜査関係者もこの銃撃事件について把握している。
また、事件のあった2018年は、高尾社の製造したパチンコ台の出玉が事前の説明よりも悪く、取引先からクレームが殺到して一騒動になっていた。内ヶ島さん自ら関係各所に謝罪して回る一方で、責任を押し付けられる格好となった営業職の人間が事件前に相次いで退職していたという。取引先への補償も検討されていたところで、そうしたこともあってか内ヶ島さんは事件前は業界団体の会合に顔を出さなくなっていたと報道されている。
こうしたトラブルが本事件に繋がったかは定かでないが、警察は関連性を慎重に捜査している模様。
【参考リンク】
愛知県警による情報提供呼びかけページは以下。
https://www.pref.aichi.jp/police/anzen/sousa/kobetsu/nakagawa/nakagawa-201810.html
【出典】
朝日新聞2018年10月25日「名古屋の会社車庫に遺体 愛知県警、殺人容疑で捜査」
読売新聞2018年10月25日「車庫に遺体? 殺人で捜査 名古屋」
朝日新聞2018年10月26日「パチンコメーカー「高尾」社長が死亡 殺人事件と断定」
朝日新聞2018年10月26日「前夜に歩く不審者、防犯カメラに映像 パチンコ会社長殺害」
産経新聞2018年10月26日「パチンコ機社長 殺害 名古屋 首や腹に刃物傷」
読売新聞2018年10月26日「パチンコメーカー社長が刺され死亡 名古屋・会社車庫で」
朝日新聞2018年10月27日「社長の退社数十分前、塀乗り越える侵入者 付近のカメラに パチンコ機器会社」
読売新聞2018年10月27日「名古屋社長刺殺 防犯カメラに不審者 前夜、会社敷地歩き回る」
東海テレビ2018年10月30日「パチンコ台性能、相次ぐ退職…社長殺害のパチンコ機器メーカー 元従業員が明かす数々のトラブル」
朝日新聞2018年11月1日「現場・行動パターン、詳細把握か パチンコ機器会社長殺害1週間」
毎日新聞2018年11月6日「名古屋・社長殺害:現場の包丁、刃渡り18センチ フェンスに血痕」
読売新聞2018年11月8日「凶器は包丁 刃渡り18センチ 名古屋の社長刺殺事件」
朝日新聞2018年11月14日「県警、不審な男の映像公開 パチンコ機器社長、刺殺事件」
毎日新聞2018年11月15日「名古屋・社長殺害:防犯カメラ画像公開 愛知県警」
読売新聞2018年11月15日「防犯カメラ 男の映像 名古屋社長刺殺 会社敷地歩き回る」
読売新聞2018年11月24日「被害者以外の血液検出 名古屋社長刺殺 あす1か月」
朝日新聞2018年11月25日「現場周辺の血痕、被害者と別人も パチンコ会社長殺害」
毎日新聞2018年11月25日「名古屋・パチンコ台メーカー社長殺害:現場に別人の血痕 退社時、行動熟知か/同時間、言い争う声」
朝日新聞2019年5月6日「有力手がかり、得られず 名古屋、パチンコ機器社長殺害半年」
朝日新聞2019年10月18日「不審者の映像、新たに公開 パチンコ機器社長刺殺1年」
読売新聞2019年10月18日「名古屋社長刺殺 新たな動画公開 事件から1年」